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【わかりやすく解説】「塗るだけで発電効率2.4倍」金のナノ粒子が起こすエネルギー革命!光の9割を吸収する“超球”の正体とは?

2026年02月27日更新

太陽光パネルの「黒」は、実はまだ「本当の黒」ではなかった

現在、私たちが街で見かける太陽光パネルは黒色をしていますが、実は太陽の光をすべて使い切れているわけではありません。

一般的な太陽光パネル(シリコン製)が得意なのは、目に見える光(可視光)から電気を作ることです。しかし、太陽光には目に見えない「近赤外線」というエネルギーが半分近く含まれています。これまでの技術では、この赤外線の多くを素通りさせてしまうか、ただの「無駄な熱」として逃がしてしまっていました。つまり、今のパネルの「黒」は、まだエネルギーを吸収しきれていない「不完全な黒」なのです。

この「見えない半分」のエネルギーを根こそぎ捕まえるために、韓国の高麗大学の研究チームが開発したのが、金を使った「超球(スープラボール)」というコーティング技術です。これは金の小さな粒を特殊な形に並べることで、光の約9割を吸収し、熱に変える魔法のようなインクです。既存のデバイスに「塗るだけ」で、発電量を2.4倍に引き上げるという驚きの成果を上げています。

太陽光の「見えない半分」という巨大な埋蔵金

波長区分 エネルギー割合 従来のPV活用 超球コーティングの役割
紫外線 (UV) 3 – 5% 活用限定的 表面プラズモンによる効率的吸収
可視光 (Visible) 40 – 45% 主な変換源 粒子間結合による広帯域吸収
近赤外線 (NIR) 52% ほぼ未利用・熱損失 ミー共鳴による多重散乱・トラップ

 

太陽から届くエネルギーの内訳を見てみると、目に見える「可視光」は約4割、残りの約半分(約52%)は「近赤外線」です。

今回注目されているのは、「光を直接電気に変える(太陽光発電)」のではなく、「光を熱に変えてから電気を作る(太陽熱電発電:STEG)」という技術です。この方式には、太陽の熱を蓄えておくことで「夜間でも発電できる」という大きなメリットがあります。

しかし、これまでは光を効率よく熱に変える「黒い塗料」の性能が低く、エネルギーの半分以上を捨てていました。研究チームが開発した「金の超球」は、この弱点を克服し、太陽の光を余さず熱に変えることで、次世代の主力エネルギーとしての可能性を大きく広げたのです。


補助金についてのセカンドオピニオン診断

魔法の構造「超球(スープラボール)」:光を閉じ込める迷路

なぜ「金」を球状に集めるだけで、それほど効率が上がるのでしょうか? そこには、光を逃がさない「二重の仕掛け」があります。

  1. 表面で光を捕まえる「プラズモン共鳴」
    金の粒子の表面には、自由に動ける電子が詰まっています。ここに光が当たると、電子が光のリズムに合わせて波のように激しく揺れ動きます(表面プラズモン共鳴)。この「揺れ」が激しい摩擦のような効果を生み、光のエネルギーを瞬時に熱へと変えてしまいます。
  2. 内部に閉じ込める「光の迷路(ミー共鳴)」
    この技術のすごいところは、金の粒を「球体」に固めた点にあります。この球体の中に入った光は、鏡の迷路に入り込んだように何度も跳ね返り、外に出られなくなります(ミー共鳴)。特に、これまでの技術が苦手だった「近赤外線」をこの迷路に閉じ込めることで、ほぼすべての光を熱に変換することに成功したのです。

読者の皆さんに分かりやすく例えるなら、一度入ったら最後、エネルギーをすべて吸い取られるまで出られない「光のブラックホール」のような構造です。

「勝手に組み上がる」から、安く大量に作れる

ナノテクノロジーと聞くと、「特別な設備が必要でコストが高い」というイメージがあるかもしれません。しかし、この「金の超球」は作り方も非常にスマートです。

この技術では、金の粒子が混ざった液体を乾燥させる過程で、水が蒸発する力を利用して粒子をぎゅっと集めます。これを「自己組織化」と呼びますが、いわば「液体が乾く時に、ナノ粒子が勝手に理想的な形に整列してくれる」のです。

高い熱や特殊な真空装置を使わず、部屋の温度で「塗って乾かすだけ」で完成するため、将来的に安く大量に生産できる可能性が非常に高いのが特徴です。


太陽光発電設置のシミュレーション

「塗り替えるだけ」で起こる劇的な進化

評価項目 従来の金ナノ粒子フィルム 金の超球(スープラボール)フィルム 向上倍率
平均太陽光吸収率 (AM 1.5G) 45.20% 88.84% 1.97 倍
TEG電気出力(電流値) 5.1 mA 11.8 mA 2.31 倍
最大吸収率(波長域全体) 一部の波長のみ 90% 以上を維持

実験では、市販の発電デバイスの表面にこの「金の超球」インクをポタポタと垂らして乾かしただけで、電気の出力が2.4倍に跳ね上がりました。

この「既存のデバイスをそのまま使える」という点は、ビジネスの視点からも非常に重要です。

  • 古い設備のアップデート:今ある太陽熱システムを買い替えなくても、表面を塗り替えるだけで性能を最新の状態に引き上げられます。
  • メンテナンスの手軽さ:塗装が古くなったらまた塗り直せばいいので、長期的なコストも抑えられます。

まさに、ハードウェアを買い替えるのではなく、ソフトウェアを更新するようにエネルギー効率を上げられる「プラグアンドプレイ」な技術なのです。

「金」は高くないのか? という疑問への答え

「金を使うなら、高価すぎて普及しないのでは?」と思うかもしれません。しかし、これには明確な解決策があります。

  • 使う量はごくわずか:ナノレベルの非常に薄い膜として塗るため、1枚のパネルに使う金の量は驚くほど少量です。発電量が増えるメリットの方が、材料費をはるかに上回ります。
  • リサイクルが可能:金は錆びたり劣化したりしにくいため、使い終わった後に回収して再利用する「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」に非常に適しています。
  • 他の安い金属への応用:今回の研究で「球状に並べる」というデザインの有効性が証明されたため、将来はアルミニウムや銅といった安価な金属を使って、さらにコストを下げる研究も進んでいます。

エネルギーを超えて広がる「熱」の未来地図

この技術は、発電以外にも私たちの暮らしを劇的に変える可能性を秘めています。

  • 水不足の解消:太陽光の熱で海水を蒸発させ、真水を作る「海水淡水化」の効率を高める
  • 究極の隠れ身の術(ステルス):赤外線を完全に吸収するため、熱検知カメラから姿を隠すステルス技術に応用
  • 次世代のがん治療:金の超球をがん細胞に届け、外から光を当てることで、がん細胞だけを「熱」で焼き切る体に優しい治療法の研究
  • 窓ガラスが発電する街:窓にこの技術を応用すれば、景観を損なわずに太陽の熱を吸収して、ビル全体の電気をまかな得る可能性

まとめ:素材の限界を「デザイン」で突破する

今回の研究の素晴らしい点は、「金のすごさ」ではなく「並べ方のデザイン(構造)」に注目したことです。

素材そのものの性質に頼るのではなく、ナノレベルで構造をデザインすることで、これまでの限界を突破したのです。このような「構造の力」を活かしたテクノロジーは、私たちが脱炭素社会を実現するための、最後のパズルを埋める鍵になるでし

参考文献

ナノロジー:https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/192226

Tiny gold spheres could improve solar energy harvesting:https://www.eurekalert.org/news-releases/1114216

Plasmonic Supraballs for Scalable Broadband Solar Energy Harvesting:https://pubs.acs.org/action/showCitFormats?doi=10.1021/acsami.5c23149&ref=pdf

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この記事の監修者

中田 萌

『お客様に寄り添うこと』をモットーに日々の業務に取り組んでおります。
太陽光発電の活用方法や蓄電池の導入などのご相談は年間2000件以上頂いており、真摯に問題解決に取り組んできました。
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中田 萌
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