追い焚きと入れ直し、どっちが安い? ガス代・水道代・電気代を徹底比較【エコキュート/ガス給湯器】

お風呂のお湯が冷めてしまった時、「追い焚き」と「お湯の入れ直し」のどちらが光熱費を節約できるのか、迷った経験はありませんか?
結論から言うと、残り湯が半分以上ある場合、多くは「追い焚き」の方がトータルコスト(ガス代・電気代+水道代)は安くなる傾向があります。しかし、これは使用している給湯器の種類(ガス給湯器かエコキュートか)や季節によって大きく左右されます。
この記事では、住まいと設備の専門家の観点から、「追い焚きと入れ直し、どっちが安いか」という疑問に対し、給湯器のタイプ別にコスト構造を徹底解説します。
- 水道代がかからない「追い焚き」が基本有利:入れ直しは「ガス代/電気代+水道代」がかかりますが、追い焚きは「ガス代/電気代」のみです。
- エコキュートは「追い焚き」が割高なケースも:エコキュートは割安な夜間電力で沸かしたお湯をタンクに貯めます。追い焚き機能は、この貯湯を使わず、割高な昼間電力でヒーターを稼働させる場合があり、コストがかさむことがあります。
- 季節(水温)の影響:冬場は水道水の温度が低いため、入れ直しに必要なエネルギーが夏場より多くかかります。そのため、冬場ほど追い焚きが有利になります。
この記事を読めば、ご家庭の状況に合わせた最適な節約方法がわかります。
目次
1. 「追い焚き」と「入れ直し」の仕組みとコスト構造
まず、「追い焚き」と「入れ直し」がそれぞれどのような仕組みで、どのようにお金がかかっているのかを整理します。この基本を理解することが、どちらが安いかを判断する第一歩です。
追い焚きの仕組みとコスト
追い焚きは、浴槽に残っている冷めたお湯を給湯器に一度吸い込み、給湯器内部で加熱(熱交換)してから再び浴槽に戻す機能です。
- メリット:すでにあるお湯を再利用するため、水道代がかかりません。かかるコストは、お湯を温め直すためのガス代(ガス給湯器)または電気代(エコキュートなど)のみです。
- デメリット:お湯を循環させるため、配管や給湯器内部に湯垢が溜まりやすくなります。また、入浴人数が増えると、お湯の汚れや雑菌の繁殖が気になる場合があります。
コスト構造は非常にシンプルで、「追い焚きコスト = 加熱にかかるガス代 or 電気代」となります。
入れ直しの仕組みとコスト
入れ直しは、浴槽の冷めたお湯をすべて(または一部)排出し、新しくお湯を張る(または「足し湯」をする)ことです。
- メリット:新しいお湯を使うため、衛生的です。給湯器の配管も汚れにくいメリットがあります。
- デメリット:お湯を捨てるため、水道代がかかります。さらに、新しい水を設定温度まで温めるためのガス代または電気代も必要です。
コスト構造は、「入れ直しコスト = 新規給湯にかかるガス代 or 電気代 + 水道代」となります。
コスト比較の基本:水道代 vs 追加加熱コスト
つまり、「追い焚きと入れ直し どっちが安いか」という問題は、「入れ直しで新たにかかる水道代」と「追い焚きで冷めたお湯を温め直す追加コスト」のどちらが高いか、という比較になります。
一般的な浴槽(約200L)の場合、水道代(上下水道)のコストは地域差もありますが約40円〜60円程度です。追い焚きにかかるガス代・電気代がこれより安ければ、追い焚きが得ということになります。
ただし、この比較は「どの給湯器を使っているか」で大きく変わります。
2. 【給湯器別】追い焚き vs 入れ直し どっちが安い?
光熱費の節約を考える上で最も重要な分岐点が、ご家庭の給湯器が「ガス給湯器」なのか「エコキュート」なのかです。特にエコキュートは、ガス給湯器とは全く異なるコスト構造を持つため注意が必要です。
ケース1:ガス給湯器(都市ガス・プロパンガス)の場合
ガス給湯器は、水道から来た水を瞬間的にガスで加熱して給湯します。追い焚きも、浴槽のお湯を循環させ、ガスで加熱し直します。
結論:残り湯が半分以上あれば、ほぼ「追い焚き」が安い
ガス給湯器の場合、追い焚きは既にあるお湯を温め直すだけなので、水道代はかかりません。一方、入れ直しは「水道代+ガス代」がフルにかかります。特に冬場で水温が5℃程度の場合、40℃のお湯を作るには大きなエネルギー(ガス代)が必要です。
ガス代が非常に高いプロパンガス(LPガス)をご利用の場合、この差はさらに顕著になります。プロパンガスは都市ガスの約1.8倍~2倍以上のコストがかかることが一般的であり、入れ直しのガス代負担が非常に大きくなるため、できる限り追い焚きで済ませるのが賢明です。
ケース2:エコキュート(オール電化)の場合
エコキュートは、空気の熱を利用してお湯を沸かすヒートポンプ式給湯器です。最大の特長は、電気代が安い「夜間電力」を使ってお湯を沸かし、そのお湯を「貯湯タンク」に貯めておく点です。
結論:「追い焚き」より「高温足し湯(実質的な入れ直し)」が安い場合が多い
ここが最大の落とし穴です。エコキュートの「追い焚き」機能は、多くの場合、タンクに貯めたお湯(夜間電力で沸かしたもの)を使いません。追い焚きには2つの方式があります。
- 熱交換方式:タンクの熱いお湯と、浴槽のぬるいお湯を熱交換器で混ぜて温め直す方式。これは効率的ですが、タンクのお湯を消費します。
- ヒーター加熱方式:追い焚き専用のヒーター(電気抵抗)を使って温める方式。この場合、割高な「昼間電力」を使って加熱することになり、コストが跳ね上がります。
一方、エコキュートの「入れ直し」や「足し湯(特に高温足し湯)」機能は、タンク内に貯まっている「夜間電力で安く沸かしたお湯」をそのまま浴槽に供給します。そのため、追い焚き(ヒーター式)よりも「高温足し湯」を使った方が、トータルの電気代が安くなるケースが多いのです。
ご家庭のエコキュートがどちらの追い焚き方式を採用しているか不明な場合でも、原則として「エコキュートは追い焚きを多用せず、高温足し湯で調整する」と覚えておくと節約につながります。
3. コスト比較シミュレーション(目安)
では、実際に追い焚きと入れ直し(または高温足し湯)で、どれくらいの費用差が出るのでしょうか。ここでは、一般的な家庭をモデルにしたコストの目安を試算します。
【試算の前提条件】
- 浴槽の湯量:200L
- お湯の設定温度:40℃
- 追い焚き対象:200Lのお湯が35℃まで低下(5℃上昇させる)
- 入れ直し対象:水温15℃(※季節により変動)
- 水道代(上下水道):1Lあたり0.25円(200Lで約50円)と仮定
- 各エネルギー単価(目安):
- 都市ガス:160円/m³
- プロパンガス:500円/m³ (都市ガスの約3倍と仮定)
- エコキュート(夜間電力):1kWhあたり30円
- エコキュート(昼間電力・追い焚きヒーター):1kWhあたり40円
| 給湯器タイプ | 追い焚き(5℃上昇) | 入れ直し(水温15℃から) | どちらが安いか |
|---|---|---|---|
| 都市ガス | ガス代:約16円
(水道代:0円) |
ガス代:約40円
水道代:約50円 合計:約90円 |
追い焚き
(約74円 得) |
| プロパンガス | ガス代:約50円
(水道代:0円) |
ガス代:約125円
水道代:約50円 合計:約175円 |
追い焚き
(約125円 得) |
| エコキュート
(追い焚きが昼間電力ヒーター) |
電気代:約46円
(昼間電力) |
電気代:約35円(夜間電力)
水道代:約50円 合計:約85円 |
追い焚き
(約39円 得) ※ただし下記参照 |
| エコキュート
(高温足し湯と比較) |
電気代:約46円
(昼間電力ヒーター) |
高温足し湯(50L)
電気代:約9円(夜間電力) 水道代:約13円 合計:約22円 |
高温足し湯
(追い焚きより約24円 得) |
この試算から分かるように、ガス給湯器(特にプロパンガス)は、入れ直しのコストが非常に高くなるため、衛生面で問題がなければ「追い焚き」を選ぶのが鉄則です。
一方、エコキュートの場合は、追い焚き(昼間電力ヒーター)よりも「高温足し湯」(夜間電力貯湯)の方が安くなるという逆転現象が起こり得ます。お湯が冷めた場合は、追い焚きボタンを押す前に、高温足し湯で温度を調整できないか検討するのが節約のコツです。
4. 追い焚き・入れ直しで損しないための注意点と節約術
コスト面(どっちが安いか)だけでなく、衛生面や日々の使い方にも節約のヒントが隠されています。追い焚きと入れ直しを上手に使い分けるための注意点と節約術を紹介します。
注意点1:残り湯の衛生問題(雑菌の繁殖)
追い焚きを繰り返す上で最大の懸念点は衛生面です。入浴後のお湯には皮脂や汚れが含まれており、時間経過とともに雑菌が繁殖しやすくなります。特に、レジオネラ属菌などは健康被害を引き起こす可能性もゼロではありません。
「追い焚きは1回まで」「翌日のお湯は使わない」など、ご家庭でのルールを決めておくことが重要です。残り湯が少ない場合や、汚れが目立つ場合は、コストが高くなったとしても「入れ直し」を選択する方が賢明です。
注意点2:入浴剤と給湯器の相性
入浴剤の種類によっては、追い焚き機能の使用が推奨されない場合があります。特に、硫黄成分や塩分、固形物を含む入浴剤は、給湯器の配管や熱交換器を傷め、故障の原因になることがあります。
入浴剤を使用する場合は、パッケージの注意書きを確認し、「追い焚き可」と記載されているものを選ぶか、入浴剤を使った日は追い焚きをせず、お湯を入れ直すようにしましょう。
節約術1:保温シートや浴槽のフタを徹底活用
非常に効果的(または「効果的」)かつ簡単な節約術の一つは、「お湯を冷まさない」ことです。浴槽のフタをこまめに閉めるだけでも放熱を防げます。さらに、アルミ製の保温シートを水面に浮かべることで、湯温の低下を大幅に遅らせることができます。
追い焚きや足し湯の回数そのものを減らすことが、最大の節約につながります。
節約術2:家族の入浴間隔を空けない
家族が順番に入浴する場合、間隔が空くほどお湯は冷めてしまいます。できるだけ連続して入浴することで、追い焚きに必要なエネルギーを最小限に抑えられます。
節約術3:給湯器の「自動保温」設定を見直す
多くの給湯器には、設定した湯温を自動でキープする「自動保温」機能がついています。便利ですが、誰も入っていない時間も給湯器が作動し、ガスや電気を消費し続けることになります。
家族全員の入浴が終わったら自動保温を切る、または最後の人が入るタイミングで手動で追い焚きをするなど、設定を見直すだけで無駄な光熱費を削減できます。
日々の光熱費全体を見直したいと感じたら、無料で「電気代・ガス代の見直し診断」を受けてみるのも一つの方法です。ご家庭の契約プランが最適かどうかが分かります。 ※お住まいの地域や契約状況により削減効果は異なります。
5. 給湯器の交換も視野に入れるタイミング
追い焚きや入れ直しのコストを日々節約することも大切ですが、使用している給湯器が古い場合、根本的な解決にはなりません。給湯器の寿命(耐用年数)は、一般的に約10年〜15年とされています。
10年以上使用している給湯器は、熱効率が新品時に比べて低下している可能性が高いです。その場合、同じ「追い焚き1回」でも、若い年式の機器より多くのガス代や電気代がかかっていることになります。
ガス給湯器からエコキュートへの切り替え
もし現在、ガス代(特にプロパンガス)の高さに悩んでいる場合、高効率なエコキュートへの交換は、長期的な光熱費削減に大きく貢献する可能性があります。
エコキュートは初期費用(工事費込で30万円〜70万円程度)がかかりますが、夜間電力の活用により、月々のランニングコストをガス給湯器の1/3〜1/5程度に抑えられるケースも少なくありません。
エコキュート導入の補助金制度
近年、国や自治体はカーボンニュートラル実現のため、高効率給湯器(エコキュートなど)の導入に対して手厚い補助金制度(例:「給湯省エネ2024事業」など)を用意しています。
こうした補助金を活用すれば、初期費用を大幅に抑えて最新のエコキュートを導入できる可能性があります。追い焚きと入れ直し、どちらが安いかを気にする頻度が多いと感じたら、それは給湯器の交換を検討するサインかもしれません。
古い給湯器の交換やエコキュート導入には、補助金が使えるケースも多いです。無料で「最新エコキュート補助金 E-BOOK」で、対象となる制度や申請のコツを先に確認しておくと安心です。 ※補助金には予算上限や申請期限、対象要件があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 結局、追い焚きと入れ直しはどっちが安いですか?
残り湯が浴槽の半分以上あり、お湯の汚れが気にならない場合は、「追い焚き」の方が水道代がかからない分、安くなるケースが多いです。
ただし、ご使用の給湯器がエコキュートの場合、例外があります。エコキュートは割高な昼間電力で追い焚き(ヒーター式)をすることがあり、それよりも割安な夜間電力で貯めたお湯を使う「高温足し湯」の方が安くなる場合があります。
- ガス給湯器:追い焚き が有利(特にプロパンガス)
- エコキュート:高温足し湯 が有利な場合が多い
※季節(水温)や残り湯の量、ご契約の電気・ガスプランによって変動します。
Q2. エコキュートで追い焚きが推奨されないのはなぜ?
エコキュートの最大のメリットは「電気代が安い夜間電力でお湯を沸かし、タンクに貯めておく」点にあります。
しかし、「追い焚き」機能は、機種によってこのタンクのお湯を使わず、割高な昼間電力を使って専用ヒーターで温め直す仕組みになっている場合があります。これでは、せっかくの夜間電力のメリットを活かせず、電気代が余計にかかってしまうため、推奨されない(または「高温足し湯」の方が安価)と言われます。
※タンクの熱を利用する熱交換方式の追い焚きもありますが、いずれにせよタンクの熱(お湯)を消費します。詳細はご使用の機器の取扱説明書をご確認ください。
Q3. 追い焚き配管の掃除はどれくらいの頻度が必要?
追い焚き機能を使うと、浴槽のお湯が給湯器と浴槽の間を循環するため、配管内部に皮脂汚れや湯垢、雑菌が溜まりやすくなります。衛生的に使用するため、定期的な洗浄が推奨されます。
市販の風呂釜洗浄剤(ジャバなど)を使った洗浄は、1ヶ月〜2ヶ月に1回程度が目安です。また、1年に1回程度は専門業者による本格的な配管洗浄(ジェット洗浄など)を行うと、より安心です。
※特に残り湯を翌日も追い焚きして使うご家庭は、こまめな洗浄をおすすめします。
Q4. プロパンガスの場合、節約効果は大きいですか?
非常に大きいです。プロパンガス(LPガス)は、都市ガスと比較して単位熱量あたりの料金が約1.8倍から2倍以上と高額になるケースが一般的です。
そのため、お湯を入れ直す際のガス代負担が非常に重くなります。プロパンガスをご利用の場合は、「追い焚きと入れ直しどっちが安いか」を比較するまでもなく、衛生面が許容できる限り「追い焚き」を選択し、入れ直しの回数を減らすことが光熱費節約に直結します。
※ガス料金は契約するガス会社や地域によって大きく異なります。
この記事の監修者

『お客様に寄り添うこと』をモットーに日々の業務に取り組んでおります。
太陽光発電の活用方法や蓄電池の導入などのご相談は年間2000件以上頂いており、真摯に問題解決に取り組んできました。
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