エネルギーミックスとは?日本の目標や今後の課題を徹底解説
エネルギーミックスがよくわからない方もいるかもしれません。
エネルギーミックスは国の方針の一環であり、私たちの生活を支える非常に重要な要素です。
今回は、エネルギーミックスの基本と、国の目標や課題を紹介します。
目次
エネルギーミックスとは何?【3つに分けて簡単に解説】
エネルギーミックスは、さまざまな発電方法をバランスよく組み合わせて、電力を上手に作っていく仕組みのことです。
電気は、火力発電や水力発電、原子力発電、再生可能エネルギーなど、さまざまな方法で作られています。
エネルギーミックスは、発電方法の割合を工夫して、電気を効率的に作ることが特徴です。
つまり、社会の電力ニーズにベストな組み合わせを見つけて、必要な電気を提供することを目標としています。
続いては、エネルギーミックスを3つに分けて簡単に説明します。
異なる電源の特性まとめ
エネルギーミックスを使うための各電源の特徴を一覧表にすると、以下のようになります。
メリット | デメリット | |
火力発電 | 安定した電力供給ができる 燃料を使って効率的な発電ができる | 大気汚染や気候変動につながる 有害物質の放出により空気を悪化させてしまう |
水力発電 | 水を使って発電できる 安定して発電できる | ダム建設が環境に影響を与える可能性がある |
原子力発電 | 大量の電力供給が可能 化石燃料を使う火力発電よりもCo2排出量が少ない | 放射性廃棄物の処理がむずかしい 原発事故のリスクがある |
太陽光発電 | 太陽の光を使って発電できる | 天気に左右され、雲が多い日は発電が減る 大きな設置面積が必要 |
風力発電 | 風を利用して発電できる 風が吹いていれば連続して発電可能 | 適した風の条件が必要 風車の設置場所に制約がある |
地熱発電 | 地球の熱を利用して発電できる 大気中に有害なガスや二酸化炭素を排出しない | 発電場所が限られる 地熱資源の開発には高いコストがかかる |
それぞれの電源にはメリットやデメリットがあり、お互いの強みと弱みを補い合うことで、安定した電力供給ができるのです。
つまり、複数の発電方法を組み合わせることで、エネルギー供給の安定性と効率を確保できるというわけです。
エネルギーミックスの起源に迫る
1973年のオイルショックで、日本が石油に依存しすぎていたことが問題となりました。
中東での戦争で原油価格が急騰し、日本経済に深刻な影響を与えたのです。
ガソリンや石油製品の値上げが原因で、物価が上昇し、スーパーでは商品が足りなくなるという問題が起き、それがきっかけでエネルギーミックスが生まれました。
これを受けて、日本は「エネルギーミックス」と呼ばれる新しいアイデアを取り入れ、一つのエネルギー源に頼らず、複数の異なるエネルギー源を組み合わせて使う考え方です。
この取り組みは将来のエネルギー不足に備えつつ、経済へのリスクを軽減することを目指しています。
エネルギーミックスとS+3Eの関連性
日本のエネルギーミックスを進める基本方針は、「3E+S」です。
これはエネルギー政策の目標を示しており、具体的には4つのポイントがあります。
基本方針 | 目標 |
Energy Security(安定供給) | 2030年までにエネルギー自給率を25%に引き上げる |
Economic Efficiency(経済性) | 2030年までに電力コスト(2013年の電力コストから0.2~0.5兆円まで)を引き下げる |
Environment(環境) | 2030年までに2013年の排出量から26%削減 |
Safety(安全) | 2011年の福島第一原発事故を経験し、安全性の確保を最優先 |
つまり、日本のエネルギーミックス政策は、安全で地球にやさしい発電所を主力にして、同時に安くて安定した電力を提供することを目指しています。
2030年度のエネルギーミックス目標の詳細解説
2030年度のエネルギーミックス目標について詳しく解説します。
2030年度エネルギーミックス目標のキーポイント
日本の電力は、主に火力発電がメインで、その割合が約8割になっています。
つまり、発電には主に石炭や天然ガスなどの火力発電が使われているわけです。
今のバランスを変えるためには、異なる発電方法の割合を増やして、エネルギーミックスを進化させる必要があります。
具体的な例は以下のとおりです。
- 太陽光発電や風力発電などの割合を拡大する
- エネルギー効率の向上や省エネ対策の強化
- 原子力や持続可能な方法での石炭利用
- 低炭素な発電方法の比率を増やす
上記の方法を取り入れることで、エネルギーミックスの進化とバランスの変化が進むことになります。
2030年度エネルギーミックス目標の実現に向けて必要な施策
2030年までのエネルギーミックスについて、以下のような計画を立てています。
再生可能エネルギー | 36~38% (太陽光14~16%、風力5%、地熱1%、水力11%、バイオマス5%) |
水素・アンモニア | 1% |
原子力 | 20~22% |
天然ガス | 20% |
石炭 | 19% |
石油等 | 2% |
総発電量 | 9340億kWh程度 |
(参照:エネルギー基本計画の概要)
2030年までに政府が目指すエネルギーミックスの目標は、2013年度と比べて温室効果ガスを46%削減し、さらに50%削減することです。
この目標を達成するために、エネルギー自給率を2013年の6%から大まかに30%に引き上げる方針を立てています。
日本の取り組み状況について
2030年の目標に向けた取り組みは進行中ですが、現時点での具体的な進捗状況について見ていきましょう。
2020年 | 2021年 | 前年度との差 | |
再生可能エネルギー | 12.0% | 12.8% | +0.8% |
原子力 | 3.9% | 6.9% | +3.0% |
水力 | 7.8% | 7.5% | △0.3% |
天然ガス | 39.0% | 34.4% | △4.6% |
石炭 | 31.0% | 31.0% | ー |
石油など | 6.4% | 7.4% | +1.3% |
(参照:令和3年度エネルギーに関する年次報告、令和4年度エネルギーに関する年次報告)
2020年と比べると、液化天然ガス(LNG)と水力の割合が減少しています。
一方で、再生可能エネルギー(新エネ)、石油、および原子力の割合が増加しています。
2030年までのエネルギーの動向は、技術や政策の進展によってさらに変化する見通しです。
世界のエネルギーミックスの状況と取り組み
電源構成のうち、再エネ可能エネルギーの割合について見ていきましょう。
国名 | 再生可能エネルギーの割合 |
ノルウェー | 700.3% |
オーストラリア | 320.0% |
カナダ | 175.8% |
アメリカ | 97.7% |
日本 | 11.8% |
(出典:エネルギー安定供給:主要国の一次エネルギー自給率の推移)
世界では、主に欧州やカナダを中心に、再生可能エネルギーの使用が広まっています。
一方で、燃料を燃やす必要がある国では、主に天然ガスや石炭に頼る傾向が見られます。
どの国も基本的に、エネルギーは経済と産業の基盤を形成する大切なものであり、エネルギーミックスの取り組みは積極的におこなわれています。
エネルギーミックスの将来的な課題
エネルギーミックスの今後の課題について、3つ紹介します。
大規模な再生可能エネルギーの導入
再生可能エネルギーを主力とする目標を達成するためには、設備を増やす必要があります。
ただし、2021年時点で再生可能エネルギーは電源構成の12.8%にすぎません。
これを2030年までに36~38%に引き上げるのはむずかしい課題です。
再生可能エネルギーを大量に使うためには、発電コストを一層下げることが求められます。
原子力発電所の再稼働の問題点
もう一つの課題は、国民全体で合意を得る必要がある原子力発電所の再稼働です。
2021年までに再稼働割合は6.9%まで上がりましたが、これを20~22%に引き上げるのはむずかしい作業です。
原発の再稼働を進めるためには、まずはっきりと原発の安全性やメリット・デメリットを国民に説明し、市民の声を大切にする過程が必要です。
同時に、厳しい基準と監視を確立して、みんなが納得できる形で進めることが大切です。
ウクライナ侵攻がもたらす影響
各国が直面している問題として、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻がエネルギーに影響を与えています。
この影響が、原油や天然ガスの価格が急騰するなどという現象に表れています。
原油や天然ガスの価格が高騰すると、再生可能エネルギーに投資する動機が高まります。
逆に、化石燃料が安いと、再生可能エネルギーへの投資が進みにくくなると考えられています。
しかし、この動きによって、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーへの投資が増え、新しいプロジェクトや技術の進化が期待されているのです。
エネルギーミックスとは、家庭にも直結する重要な政策!
今回は、エネルギーミックスについての特徴や今後の課題を紹介しました。
エネルギーミックスは、いくつかの異なる発電方法を組み合わせて、電力を効率的に作り出す方法です。
ただし、2030年までに掲げられたエネルギーミックスの目標を達成するのは、すぐに実現できるものではありません。
エネルギー価格の上昇や家計への影響に興味を持っている方やエネルギーミックスに関心を抱いている方は、この記事を読みながら太陽光発電や蓄電池を考えてみることをおすすめします。
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この記事の監修者
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