太陽光出力制御とは?仕組みと対策を徹底解説

太陽光出力制御の基本概念
太陽光出力制御とは、電力系統の安定性を保つために、太陽光発電設備の発電量を一時的に抑制する措置のことです。この制御は、電力需要と供給のバランスを維持し、停電などの大規模な電力トラブルを防ぐために実施されます。
近年、再生可能エネルギーの普及に伴い、太陽光発電設備の設置が急速に増加しています。しかし、太陽光発電は天候に左右される不安定な電源であり、電力系統に接続される太陽光発電量が増加することで、電力の需給バランスが不安定になるリスクが高まっています。
出力制御が必要な理由
電力系統では、発電量と消費量を常に一致させる必要があります。供給量が需要量を上回ると周波数が上昇し、電力機器の故障や大規模停電につながる可能性があります。特に、電力需要の少ない春や秋の休日などに、太陽光発電の出力が多くなりすぎることがあります。
また、送電線の容量にも限界があり、一定量以上の電力を送ることができません。地域によっては送電網の整備が追いついておらず、太陽光発電設備が増加することで送電容量を超過するリスクが生じています。
出力制御の種類と仕組み
指定ルール(旧ルール)
指定ルールは、2015年1月25日以前に接続契約を締結した太陽光発電設備に適用される制度です。このルールでは、年間30日または360時間を上限として無補償での出力制御が実施されます。上限を超えた制御については、売電収入相当額の補償が受けられます。
指定ルールが適用される発電設備は、比較的早期に系統連系を行った設備であり、出力制御の頻度や時間が限定的であることが特徴です。
新ルール(指定ルール適用外)
新ルールは、2015年1月26日以降に接続契約を締結した太陽光発電設備に適用されます。新ルールでは、無制限・無補償での出力制御が可能となっており、電力会社の判断により制御される可能性があります。
この制度変更により、新たに設置される太陽光発電設備については、出力制御による売電収入への影響をより慎重に検討する必要があります。
オンライン制御とオフライン制御
出力制御の実施方法には、オンライン制御とオフライン制御の2種類があります。
オンライン制御は、電力会社が遠隔操作により太陽光発電設備の出力を調整する方式です。リアルタイムでの制御が可能であり、必要な分だけ出力を抑制できるため、効率的な制御が実現できます。
一方、オフライン制御は、電力会社からの指示に基づいて発電事業者が手動で出力を調整する方式です。連絡手段としては電話やメール、ファックスなどが用いられます。
地域別の出力制御状況
九州電力管内
九州電力管内は、全国で最も出力制御が頻繁に実施されている地域です。2018年10月に全国初の出力制御が実施されて以降、年間を通じて制御が行われています。
九州地方は日照条件が良好で太陽光発電の普及率が高い一方、電力需要が比較的少ないため、需給バランスの調整が困難な状況が続いています。
四国電力管内
四国電力管内でも、2019年から出力制御が実施されています。四国地方は面積に対する太陽光発電設備の設置密度が高く、特に春や秋の電力需要が少ない時期に制御が必要となることが多くなっています。
中国電力管内
中国電力管内では、2021年から出力制御が開始されました。山間部を中心に大規模な太陽光発電設備の設置が進んでおり、今後も制御の頻度が増加する可能性があります。
その他の地域
東京電力や関西電力などの大都市圏を含む電力会社管内では、まだ出力制御の実施例は限定的です。しかし、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、将来的には制御が必要となる可能性があります。
出力制御による影響と対策
売電収入への影響
出力制御が実施されると、その期間中は太陽光発電による売電ができなくなります。新ルール適用設備の場合、制御による売電収入の減少は無補償となるため、投資回収期間の延長や収益性の低下が懸念されます。
特に、出力制御の頻度が高い地域では、年間の売電量が当初の想定を大幅に下回る可能性があり、事業計画の見直しが必要となる場合があります。
蓄電池の活用による対策
出力制御の影響を軽減する方法として、蓄電池の設置が注目されています。出力制御時に余剰電力を蓄電池に蓄えることで、制御終了後や夜間に自家消費や売電に活用することができます。
家庭用蓄電池の費用相場は容量1kWhあたり20万円~30万円程度で、一般的な4kWh~7kWhの蓄電池の場合、100万円~200万円程度が目安となります。蓄電池の標準的な設置工事費用は20万円~35万円程度で、設置環境や配線の複雑さ等により変動します。詳しくはお気軽にリノベステーションにお問い合わせください。
自家消費率の向上
太陽光発電の自家消費率を高めることで、出力制御の影響を最小限に抑えることができます。エコキュートやV2Hシステムなどの電力消費機器を導入することで、昼間の余剰電力を有効活用できます。
エコキュートの設置工事費は配管工事や電気工事を含めて10万円~30万円程度が目安で、一般的な貯湯タンク容量は460Lとなっています。エコキュートの補助金は機器の種類や設置条件によって10万円から25万円程度の支援が受けられる場合があります。
今後の見通しと技術動向
送電網の増強
出力制御の根本的な解決策として、送電網の増強が進められています。電力会社各社は、再生可能エネルギーの大量導入に対応するため、送電線の新設や既存設備の増強工事を実施しています。
しかし、送電網の整備には長期間を要するため、当面は出力制御の継続が見込まれています。
蓄電技術の進歩
大型蓄電池システムの導入により、電力系統全体での需給調整能力の向上が期待されています。NAS電池などの系統用蓄電池の寿命は15年程度とされており、長期間にわたって安定した運用が可能です。
スマートグリッドの活用
ICT技術を活用したスマートグリッドの導入により、より効率的な電力制御が可能になると期待されています。需要予測の精度向上や、リアルタイムでの最適制御により、出力制御の頻度や規模を最小限に抑えることができる可能性があります。
太陽光発電設備導入時の注意点
接続契約前の確認事項
太陽光発電設備を新規に設置する場合、接続予定地域の出力制御状況を事前に確認することが重要です。電力会社のウェブサイトでは、出力制御の実績や今後の見通しが公表されています。
また、系統連系は申請から承認までに通常3ヶ月~6ヶ月程度を要するため、計画的な手続きが必要です。(※電力会社との系統連系を行う場合、経年劣化が早まることがあります)
事業計画の見直し
出力制御の可能性を考慮した事業計画の策定が不可欠です。売電収入の減少リスクを織り込んだ収支計算を行い、投資回収期間や収益性を慎重に検討する必要があります。
設備選定のポイント
太陽光発電システムの費用相場は1kWあたり35万円~40万円程度で、一般的な家庭用太陽光発電システム(4kW~5kW)を導入する場合の費用相場は140万円~200万円程度が目安となります。太陽光パネルの設置費用の相場は、パネルの種類や設置面積、工事内容などによって大きく異なりますが、一般的には1kWあたり35万円~40万円程度です。
出力制御対応機器の選定や、将来的な蓄電池導入を見据えた設計を行うことが重要です。住宅用太陽光発電(10kW未満)の売電価格は、1kWhあたり15円で、設置年度や電力会社によって異なります。
太陽光発電システムの設置工事は、一般的な住宅用システムの場合、1~2日程度で完了します。工事前には電力会社への連系申請や各種手続きが必要で、申請から工事完了まで全体では3~6ヶ月程度の期間を要することが一般的です。
よくある質問
出力制御はどのような場合に実施されるのですか?
出力制御は主に電力需要が少なく、太陽光発電の出力が多い時期に実施されます。具体的には、春や秋の休日、ゴールデンウィーク、年末年始などの時期に頻繁に行われる傾向があります。また、天候が良好で太陽光発電の出力が予想以上に多くなった場合にも制御が実施される可能性があります。
出力制御による売電収入の補償はありますか?
補償の有無は、接続契約を締結した時期により異なります。2015年1月25日以前に契約した指定ルール適用設備については、年間30日または360時間を超えた制御分について補償が受けられます。一方、2015年1月26日以降に契約した新ルール適用設備については、無制限・無補償での制御となります。
家庭用太陽光発電でも出力制御の対象になりますか?
10kW未満の住宅用太陽光発電設備も出力制御の対象となります。ただし、実際の制御においては、大規模な産業用設備から優先的に制御が実施される場合が多く、住宅用設備への影響は相対的に少ない傾向があります。
出力制御を回避する方法はありますか?
完全に回避することは困難ですが、影響を軽減する方法はあります。蓄電池の設置により余剰電力を蓄えたり、エコキュートやV2Hシステムの導入で自家消費率を向上させることで、制御による影響を最小限に抑えることができます。
今後出力制御は増加する見込みですか?
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、当面は出力制御の頻度や地域が拡大する可能性があります。ただし、送電網の増強や蓄電技術の進歩、スマートグリッドの普及により、長期的には制御の必要性が軽減されることが期待されています。
この記事の監修者

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