ソーラーシェアリングとは?仕組みや設置条件などを解説!
ソーラーシェアリングとは、農業と太陽光発電を組み合わせた仕組みのことです。
日本では農林水産省が中心となって推進しています。
しかし、具体的な内容についてはまだまだ知られていないかもしれません。
今回はソーラーシェアリングの仕組みや設置条件、メリット・デメリットなどについてまとめ、将来性についても展望します。
目次
ソーラーシェアリングとは何か
ソーラーシェアリングとはどのようなものなのでしょうか。
仕組みや規制緩和の状況、具体例などについてまとめます。
ソーラーシェアリングの仕組み
ソーラーシェアリングとは、一つの農地で農業と発電を同時に行う新しい農業スタイルのことです。
簡単に言えば、農地の上に太陽光パネルを設置するもので、2013年に農林水産省が設置を認めてから急速に普及しました。
「農作物の上に太陽光パネルを設置する」と説明すると、「太陽光パネルでさえぎられるから、作物が成長しにくくなるのではないか」と心配する人もいます。
しかし、農作物が必要とする太陽光の量には上限があるため、多すぎる太陽光は不要です。
ソーラーシェアリングでは太陽光パネルの設置時に作物が成長するのに十分な太陽光の確保を優先し、作物が悪影響を受けないようにします。
ソーラーシェアリングで生み出された電力は売電用や自家用として利用できます。
ソーラーシェアリングの規制緩和
2018年、農林水産省は規制の一部緩和を決めました。
緩和されたのは農地転用の更新手続きです。
従来は3年ごとに農地転用手続きを更新しなければなりませんでしたが、規制緩和後は10年に延長されました。
これにより、手続きの手間が減るためソーラーシェアリングがやりやすくなりました。
農業問題と電力問題の両方を解決できる
現在、日本の農業は高齢化などによる人手不足が深刻化し、利用されずに荒廃する農地が増加しています。
2022年2月から続くウクライナでの戦争以後、世界経済は不安定化し、急激な円安が進行。
輸入農作物や天然ガスなどのエネルギー資源が高騰し、物価高を引き起こしています。
こうした問題の解決策の一つがソーラーシェアリングです。
この仕組みを導入することにより農家は農業収入以外の副収入、あるいは自家消費電力の節約が可能となります。
農業の収益が高くなれば、あらたに就農する人を増やせるかもしれません。
設置条件と売電価格
ソーラーシェアリングは誰でもできるわけではありません。
日本語訳が「営農型太陽光発電」であることからわかるように、農業を営んでいることが必須の条件です。
ソーラーシェアリングを行うためには農地の一時転用許可が必要です。
一時転用の条件(設置条件)と売電価格についてまとめます。
設置条件
農林水産省は農地の一時転用の許可を出すにあたり、以下の点をチェックしています。
- 一時転用が10年、または3年以内と一定期間内の転用となっていること
- 農業が行われている(営農している)こと
- 農産物の品質が著しく劣化していないこと
- 周辺の農地とくらべ単位当たりの収穫量が2割以上減少していないこと
2021年3月に荒廃農地の収穫量に関する制限が撤廃されたため、以前よりも設置条件が緩和されました。
また、年に1回の報告が必要で、農作物の生産に影響が出ていないかどうか確認します。
もし、悪影響が出ているようであれば、設備を撤去して元の農地を復元しなければなりません。
売電価格
資源エネルギー庁は太陽光発電の買取価格を公開しています。
それによると、2022年度のソーラーシェアリング電力の買取価格は11円とされています(10kw以上50kw未満)。
この価格で国が20年間にわたって買い取ってくれます。
ソーラーシェアリングのメリット・デメリット
ソーラーシェアリングは農業をしながら発電できるという点で画期的な仕組みです。
この仕組みのメリット・デメリットについて解説します。
メリット
メリットは全部で3つあります。
- 農業従事者の収入を増やせる
- 適度な日陰が生まれ生育に良い環境になる
- 土地を有効利用できる
1つ目のメリットは農業従事者の収入が増えることです。
農業は気候に左右される産業です。
天候不順で作物が取れないときや収穫量が多すぎて値崩れしてしまい、結果的に収益を増やせないこともあります。
農業と太陽光発電を同時に行うことで、天候に関係なく安定した売電収入や節電による経済効果の恩恵が受けられます。
2つ目のメリットは作物の生育環境を良くできることです。
適度な太陽光は植物の生育に必須ですが、太陽光が多すぎると作物の収量が減少してしまいます。
太陽光パネルを設置することで、過度な日光を遮り、農作物にとって良い生育環境にできます。
3つ目のメリットは土地を有効利用できることです。
ソーラーシェアリングは現在使用されている農地だけではなく、荒廃農地を再利用することでも実施可能です。
後継者不足などにより耕作者がいなくなった農地を有効活用するきっかけにできます。
デメリット
ソーラーシェアリングには農業従事者の収入や荒廃農地の再利用といったメリットがあるとわかりました。
その一方、無視できないデメリットも存在します。
- 一時転用の手続き申請や転用申請の更新といった手続きが煩雑
- 毎年、農地の収穫量を報告すること
一時転用を認めてもらうには、意見書、営農計画書をはじめとする多数の書類が必要で、これらの書類をそろえるのはかなり手間です。
しかも、手続き書類が各農業委員会でことなっているため、統一したひな形がなく、作成が非常に面倒です。
また、ソーラーシェアリングをしている人は農業委員会に収穫量を報告する義務も発生します。
この仕組みは農業が中心の政策であり、太陽光発電がメインというわけではないからです。
収穫量が周辺農地の80%を下回っていないことや作物の品質が著しく劣化していないことも報告しなければなりません。
ソーラーシェアリングの将来性
農家にとって20年間にわたり売電収入が保証されるというのは非常に大きなメリットです。
不安定な収入を補う一つの方策として十分に魅力的な施策だといえます。
今後、以下のようなことが起きればさらに発展する可能性があります。
- 地産地消や自給率向上の試み
- 発電技術の向上
- 大規模化
この仕組みはもともと農業と連携したものでした。
2022年の地政学的リスクの増大や急激なインフレは、外国から安価な食料を大量に輸入することを難しくさせました。
国内の遊休農地の活用や税制面での優遇、さらなる規制緩和が進められるかもしれません。
また、発電技術や大規模化といったことも起こる可能性があります。
副収入である太陽光発電の売電収入が20年間続くことや遊休農地の活用などによる大規模化を踏まえると、将来性がある取り組みになるかもしれません。
まとめ
今回はソーラーシェアリングの仕組みや設置条件、メリット・デメリット、将来性などを中心に整理しました。
ソーラーシェアリングがもっと広まれば、営農者の収入アップ・安定化や荒廃農地の再利用などにつながるかもしれません。
今後、どのように進展するか注目です。
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