蓄電池とUPSの違いから選び方まで

停電対策や電力供給の安定化を検討している方にとって、蓄電池とUPS(無停電電源装置)は重要な選択肢となります。しかし、どちらを選ぶべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、蓄電池とUPSの基本的な仕組みから違い、それぞれの特徴、選び方のポイントまで詳しく解説します。
目次
蓄電池とUPSの基本概念
蓄電池とは何か
蓄電池は、電気エネルギーを化学エネルギーの形で蓄積し、必要な時に電力として供給する装置です。家庭用蓄電池は主にリチウムイオン電池が使用されており、太陽光発電システムと組み合わせることで、日中に発電した電力を夜間や停電時に活用できます。
蓄電池は長期間の電力供給を目的とした設備で、災害時の備えとしても注目されています。
最新のリチウムイオン蓄電池は、充放電サイクル数が6,000回から12,000回程度の高い耐久性を持ち、寿命は30年前後と長期間の使用が可能です。
UPS(無停電電源装置)とは何か
UPS(Uninterruptible Power Supply)は、停電や電圧変動などの電力異常が発生した際に、瞬時にバックアップ電源に切り替えて機器への電力供給を維持する装置です。主にコンピューターやサーバー、医療機器などの重要な電子機器を保護する目的で使用されます。
UPSは瞬間的な電力異常から機器を守り、安全なシャットダウンまでの時間を確保することが主な役割です。
データの損失や機器の損傷を防ぐため、オフィスや病院、データセンターなどで広く導入されています。
蓄電池とUPSの主な違い
用途と目的の違い
蓄電池とUPSは、どちらも電力供給に関わる機器ですが、用途と目的が大きく異なります。
蓄電池は、電力の平準化や長期間の電力供給を目的としています。太陽光発電と組み合わせることで、昼間に余った電力を夜間に使用したり、停電時に数時間から数日間の電力供給が可能です。また、電力会社からの電気料金削減効果も期待できます。
一方、UPSは電力異常時の瞬時バックアップが主目的です。停電時に数分から数十分程度の短時間電力供給を行い、重要なデータの保存や機器の安全なシャットダウンを可能にします。
供給時間の違い
蓄電池は容量に応じて長時間の電力供給が可能です。家庭用蓄電池の場合、4kWh~7kWhの容量で、一般的な家庭の必要最小限の電力を6時間~24時間程度供給できます。大容量の10kWh以上のモデルでは、さらに長時間の使用が可能です。
UPSの供給時間は比較的短く、通常は5分から30分程度です。これは機器の安全な終了処理を行うための最小限の時間を確保することが目的のためです。長時間の電力供給を目的とした設計ではありません。
価格帯の違い
家庭用蓄電池の費用相場は容量1kWhあたり20万円~30万円程度となっており、4kWh~7kWhの標準的なモデルでは100万円~200万円程度が目安となります。設置工事費用として20万円~35万円程度が別途必要です。
UPSは比較的低価格で導入でき、家庭用の小型モデルであれば数万円から、業務用の大型モデルでも数十万円程度で購入可能です。
蓄電池の種類と特徴
リチウムイオン蓄電池
現在の家庭用蓄電池の主流となっているのがリチウムイオン蓄電池です。高いエネルギー密度と長寿命が特徴で、充放電効率が90%以上と高く、コンパクトな設計が可能です。
リチウムイオン蓄電池は自己放電率が低く、長期間使用しなくても電力の減少が少ないという利点があります。
また、メモリー効果がないため、継ぎ足し充電を行っても性能が劣化しません。
鉛蓄電池
従来から使用されている鉛蓄電池は、初期費用が安価で安全性が高い特徴があります。ただし、重量が重く、充放電効率がリチウムイオン電池より劣ります。設置スペースも多く必要となるため、現在は小規模な用途に限定されることが多くなっています。
NAS電池
NAS(ナトリウム硫黄)電池は、主に大規模な蓄電設備で使用される技術です。高温での動作が必要なため家庭用としては適していませんが、寿命は15年程度と長く、大容量での蓄電が可能です。
UPSの種類と特徴
常時商用給電方式(オフライン方式)
最も基本的なUPSの方式で、通常時は商用電源をそのまま機器に供給し、停電時のみバッテリー電源に切り替わります。切り替え時間は数ミリ秒程度発生しますが、一般的なコンピューターなどには影響ありません。
価格が安価で導入しやすく、家庭用や小規模オフィス向けとして広く使用されています。
ラインインタラクティブ方式
商用電源の電圧変動を自動調整する機能を持つUPSです。停電時以外にも、電圧の上昇や低下に対して自動的に調整を行うため、より安定した電力供給が可能です。
ラインインタラクティブ方式は電圧変動の多い地域や、電圧に敏感な機器の保護に適しています。
常時インバーター給電方式(オンライン方式)
最も高性能なUPSの方式で、常にインバーターを通して安定した電力を供給します。停電時の切り替え時間がゼロで、電圧・周波数の変動も完全に除去できます。
高価格ですが、サーバーや医療機器など、電力品質に極めて敏感な機器の保護に使用されます。
家庭での使い分けと選び方
蓄電池が適している場面
蓄電池は以下のような場面で最適な選択肢となります:
太陽光発電システムとの組み合わせを検討している場合、蓄電池の導入により自家消費率を大幅に向上させることができます。
日中に発電した電力を夜間に使用することで、電気料金の削減効果が期待できます。
災害時の長期停電に備えたい場合も蓄電池が適しています。容量にもよりますが、冷蔵庫や照明、スマートフォンの充電など、必要最小限の電力を数日間供給することが可能です。
電気料金の安い深夜電力を蓄電し、電気料金の高い昼間に使用する「ピークカット」による経済効果を狙う場合にも蓄電池が有効です。
UPSが適している場面
UPSは以下のような用途に最適です:
在宅ワークやテレワークで重要なデータを扱うパソコンの保護が必要な場合、UPSがあれば停電時にも安全にデータを保存し、システムをシャットダウンできます。
ホームサーバーやNAS(ネットワーク接続ストレージ)を運用している場合、UPSによる保護は必須といえます。
突然の電源断によるデータ破損を防ぐことができます。
医療機器や介護機器を使用している家庭では、UPSにより短時間でも電力供給を維持することで、安全性を確保できます。
費用対効果の比較
蓄電池は初期投資が大きいものの、長期的な電気料金削減や災害時の安心感など、総合的なメリットが大きい特徴があります。容量別の価格相場は、小容量の3kWh~5kWhタイプが100万円~150万円、中容量の6kWh~10kWhタイプが150万円~200万円、大容量の10kWh以上が200万円~350万円程度となっています。
UPSは初期費用が安く、即座に導入効果を実感できます。家庭用の小型UPSであれば数万円から購入でき、重要機器の保護という明確な目的に対して高い効果を発揮します。
設置時の注意点とメンテナンス
蓄電池の設置とメンテナンス
蓄電池の設置には専門的な電気工事が必要で、設置環境や配線の複雑さ等により工事費用が変動します。詳しくはお気軽にリノベステーションにお問い合わせください。
設置場所は屋外設置型と屋内設置型があり、それぞれに適した環境条件があります。屋外設置の場合は直射日光や雨水を避けられる場所、屋内設置の場合は換気が良く、温度変化の少ない場所が理想的です。
メンテナンスについては、定期的な動作確認と清掃が必要です。蓄電池本体の保証期間は10年~15年程度が一般的ですが、基本的には無償保証の対象となります。
UPSの設置とメンテナンス
UPSは比較的簡単に設置できますが、設置場所の選定が重要です。熱がこもりやすい場所や湿度の高い場所は避け、十分な換気を確保する必要があります。
バッテリーの交換時期は使用頻度や環境により異なりますが、一般的に2年~5年程度です。定期的なバッテリーテストを行い、バッテリーの劣化状況を確認することが推奨されます。
最新の技術動向と将来性
蓄電池技術の進歩
蓄電池技術は急速に進歩しており、エネルギー密度の向上やコストダウンが進んでいます。固体電解質を使用した全固体電池や、リン酸鉄リチウム(LFP)電池など、より安全で長寿命な技術の実用化が進んでいます。
AI技術との連携により、電力需要予測や最適な充放電制御を行うスマート蓄電池システムも普及しています。
これにより、より効率的な電力利用と経済効果の最大化が可能になっています。
UPS技術の発展
UPS技術においても、効率性の向上と小型化が進んでいます。従来の鉛蓄電池に代わってリチウムイオン電池を採用したUPSも登場し、より長寿命で高性能な製品が増えています。
クラウド連携機能を搭載したUPSも登場し、遠隔監視や予防保全が可能になっています。これにより、より確実な電力保護と運用コストの削減が実現されています。
導入前に確認すべきポイント
電力需要の把握
蓄電池やUPSを選択する前に、まず自宅の電力需要を正確に把握することが重要です。月間の電気使用量や、停電時に必要最小限の電力がどの程度かを算出しましょう。
一般的な4人家族の場合、冷蔵庫、照明、スマートフォンの充電程度であれば、1日あたり3kWh~5kWh程度の電力があれば対応可能です。
設置環境の確認
設置予定場所の環境条件を事前に確認することが必要です。蓄電池の場合は屋外設置が多いため、直射日光や雨水の影響を受けない場所の確保が重要です。UPSは屋内設置が基本ですが、熱対策と換気の確保が必要です。
法規制と補助金の確認
蓄電池の設置には電気工事士による工事が必要で、電力会社への連系申請が必要な場合があります。申請から承認までは通常3ヵ月~6ヵ月程度の期間を要します。
補助金制度についても事前に確認しましょう。自治体によっては蓄電池導入に対する補助金制度があり、導入費用の負担軽減が可能な場合があります。
経済性と投資回収
蓄電池の経済効果
蓄電池の経済効果は、電気料金プランや太陽光発電の有無によって大きく変わります。深夜の安い電力を蓄電し、昼間の高い電力料金時間帯に使用することで、月々の電気料金を削減できます。
太陽光発電システムと組み合わせた場合、住宅用太陽光発電(10kw未満)の売電価格は1kWhあたり15円(設置年度や電力会社によって異なります)ですが、自家消費することで電力会社からの購入電力量を減らし、より大きな経済効果が得られます。
UPSの経済効果
UPSの経済効果は、保護対象機器の価値や業務への影響度によって判断されます。停電によるデータ損失や機器故障の修理費用を考慮すると、UPSの導入費用は十分に回収可能です。
特に在宅ワークが中心の方にとって、パソコンの保護や業務継続性の確保は、UPS導入による明確なメリットといえます。
選択の判断基準
蓄電池を選ぶべき場合
以下の条件に当てはまる場合は、蓄電池の導入が適しています:
太陽光発電システムを導入済み、または同時導入を検討している場合、蓄電池との組み合わせにより自家消費率を大幅に向上できます。
災害時の長期停電に備えたい場合、蓄電池により数日間の電力確保が可能になります。特に小さなお子様や高齢者がいる家庭では、安心感が大きく向上します。
電気料金の削減を長期的に図りたい場合、時間帯別電気料金プランと組み合わせることで、月々の電気代を効果的に削減できます。
UPSを選ぶべき場合
以下のような用途がある場合は、UPSの導入が適しています:
在宅ワークで重要なデータを扱う機会が多い場合、UPSによりデータ損失のリスクを大幅に軽減できます。
医療機器や介護機器を使用している場合、短時間でも電力供給を維持することで安全性を確保できます。
サーバーやNASなどのネットワーク機器を運用している場合、24時間稼働している機器の保護にUPSは必須です。
ホームシアターシステムやゲーム機器など、精密な電子機器を多数使用している場合、電力品質の安定化によりトラブルを防止できます。
導入の流れと準備
蓄電池導入の流れ
蓄電池の導入は以下の手順で進めます:
- 電力需要の算出と容量の決定
- 設置場所の選定と現地調査
- 機器の選定と見積もり取得
- 電力会社への連系申請(必要な場合)
- 設置工事の実施
- 動作確認と使用開始
工事期間は一般的な住宅用システムの場合、1~2日程度で完了します。ただし、工事前の各種手続きも含めると、申請から工事完了まで全体では3~6ヶ月程度の期間を要することが一般的です。
UPS導入の流れ
UPSの導入は比較的簡単で、以下の手順で行えます:
- 保護対象機器の消費電力算出
- 必要な供給時間の設定
- 適切な容量のUPS選定
- 設置場所の確保
- 機器の設置と接続
- 動作テストと設定
専門的な電気工事は不要で、多くの場合は購入後すぐに使用開始できます。
まとめ
蓄電池とUPSは、どちらも電力の安定供給に関わる重要な機器ですが、用途と目的が大きく異なります。
蓄電池は長期間の電力供給と経済効果を重視する方に適しており、太陽光発電との組み合わせにより最大の効果を発揮します。
一方、UPSは短時間の電力保護に特化しており、重要な電子機器の保護や業務継続性の確保が主目的です。
自宅の電力需要や用途、予算を総合的に検討し、最適な選択を行うことが重要です。どちらの機器も、適切に選択・運用することで、安心で快適な電力環境を実現できます。
設置や選定について詳しく知りたい方は、お気軽にリノベステーションにお問い合わせください。
よくある質問
蓄電池とUPSは同時に使用できますか?
はい、蓄電池とUPSは同時に使用可能です。蓄電池で長期的な電力供給を確保し、UPSで重要機器の瞬時保護を行うという使い分けができます。特に在宅ワークとして重要なデータを扱う場合や、医療機器を使用している家庭では、両方の導入により万全の電力保護体制を構築できます。
蓄電池の容量はどのように選べばよいですか?
蓄電池の容量選択は、月間電気使用量と停電時に必要な電力を基準に決定します。一般的な4人家族の場合、4kWh~7kWh程度の容量があれば、停電時の必要最小限の電力を半日から1日程度供給できます。太陽光発電と組み合わせる場合は、日中の余剰電力量も考慮して容量を決定することが重要です。
UPSのバッテリー交換頻度はどの程度ですか?
UPSのバッテリー交換は、使用環境や頻度によって異なりますが、一般的に2年~5年程度が目安です。高温環境での使用や頻繁な停電によるバッテリー使用は寿命を短くします。定期的なバッテリーテストを行い、容量低下が確認された時点で交換することを推奨します。最新のUPSには自動診断機能が搭載されており、交換時期を通知してくれるモデルもあります。
停電時に蓄電池からUPSに電力供給することは可能ですか?
技術的には可能ですが、効率性の観点から推奨されません。蓄電池からUPSを経由して機器に電力供給する場合、二重の変換により電力ロスが発生します。蓄電池に直接接続可能な機器は蓄電池から、瞬時切り替えが必要な機器はUPSから直接電力供給を受ける構成が最も効率的です。
蓄電池とUPSの寿命に違いはありますか?
蓄電池とUPSでは寿命に大きな違いがあります。家庭用蓄電池の寿命は30年前後と長期間使用が可能です。一方、UPSのバッテリー部分は2年~5年程度で交換が必要ですが、UPS本体の制御回路などは10年~15年程度使用できます。蓄電池は長期投資として、UPSは消耗品として捉えた費用計画を立てることが重要です。
この記事の監修者

『お客様に寄り添うこと』をモットーに日々の業務に取り組んでおります。
太陽光発電の活用方法や蓄電池の導入などのご相談は年間2000件以上頂いており、真摯に問題解決に取り組んできました。
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