カーボンニュートラルとは?何をすればいい?徹底解説!
国際的な専門家の集まりであるIPCCが提出した第6次報告書で「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」と指摘しています。
温暖化の主因となっているのが二酸化炭素です。
温暖化を止め、地球環境を守るための手段の一つにカーボンニュートラルがあります。
今回はカーボンニュートラルの意味や理由、世界の状況を踏まえ、どうすれば実現できるかについてわかりやすく解説します。
目次
カーボンニュートラルとは
環境問題について調べると、必ずと言っていいほど登場するのが「カーボンニュートラル」です。
直訳すると「炭素中立」となってしまい、意味が分かりにくくなってしまいます。
ここではカーボンニュートラルの意味や目指す理由、世界のカーボンニュートラルの現状についてまとめます。
カーボンニュートラルの定義
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロの状態にすることを意味しています。
温室効果ガスとは、地球の気温を上昇させる効果を持つ二酸化炭素やメタンガスのことです。
温室効果ガスがないと地球の平均気温は-19℃になってしまうので、私たちが生きるうえで必要なものです。
しかし、温室効果ガスが多すぎると地球気温が上昇しすぎる地球温暖化の原因となります。
温室効果ガスのうち、二酸化炭素は私たちの生活によって生み出されています。
特に、産業革命以後は石炭や石油といった化石燃料を使うことで二酸化炭素の排出量が大きく増え、地球温暖化の原因となってきました。
カーボンニュートラルは温暖化の原因となっている二酸化炭素の発生を抑え、吸収量と等しくすることで地球温暖化を止めようという考え方なのです。
カーボンニュートラルを目指す理由
カーボンニュートラルの目的は地球温暖化を止めることです。
IPCC第6次報告では、排出する二酸化炭素は地球温暖化の最大の要因と指摘しています。
経済成長と環境保護を両立するには、二酸化炭素の排出量を減らし、吸収量を増やさなければなりません。
2020年、当時の菅首相は2050年までのカーボンニュートラル達成を表明しました。
これにもとづき、日本政府は二酸化炭素排出量の削減や吸収量を増やすための施策、太陽光発電などの再生可能エネルギーの開発、二酸化炭素を排出しない原子力発電の活用など幅広い分野で目標達成のために動いています。
世界のカーボンニュートラルの現状
2021年11月の段階で、2050年までのカーボンニュートラル達成を表明している国と地域は154か国・1地域に及びます。
これらの国の二酸化炭素排出量は世界全体の79%に達します。GDPでみると90%を占める国と地域がカーボンニュートラルを目指しています。
こうした動きの背景にはESG投資の拡大があります。
ESG投資とは企業活動を分析する指標として、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を重視する投資方法のことです。
SEG投資をはじめとする環境問題に対する関心の高まりがカーボンニュートラルを後押ししているといえます。
どうすれば実現できるのか
地球温暖化を止める方法の一つとしてカーボンニュートラルが注目されています。しかし、どのようにすれば実現できるのでしょうか。
ここでは5つの具体的な方法を紹介します。
省エネ・エネルギー効率の向上
1つ目の方法は、省エネやエネルギー効率の向上です。
エネルギー消費量が少ない製品に切り替えると、その分だけ電力消費が抑えられます。
照明を従来型の蛍光管からLEDに変更したり、空調設備をエネルギー消費の少ない最新型に変更したりすることでエネルギー消費量を抑えられます。
ZEHのような省エネ・高断熱住宅の普及も方法の一つです。
住宅の断熱性が高まれば、冷暖房の効率が良くなってエネルギー消費量を抑制できます。
加えて、エコキュートのような高効率給湯機を導入すると、さらに省エネが進みます。
2023年、政府は給湯省エネ事業を実施し、エコキュートなどの高効率給湯器の設置に補助金を出しています。
これもカーボンニュートラルを推進するための施策の一つといえるでしょう。
再生可能エネルギーの割合増加
2つ目の方法は、再生可能エネルギーの割合を増やすことです。
再生可能エネルギーとは、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないエネルギーのことです。
太陽光発電・風力発電・地熱発電・中小水力発電・バイオマス発電などがあてはまります。
2011年の東日本大震災後、日本は発電の大半を火力発電に頼ってきました。
2021年のデータをみると、電力の70%以上が火力発電によって生み出されています。
政府は再生可能エネルギーの割合を現在の2倍近くまで増やし、火力発電の割合を3分の2程度まで減らすことで温室効果ガスの排出量を削減しようと考えています。
同時に、安全性を確認したうえで、原子力発電の割合を増やすことも検討しています。
山林の整備・植林による二酸化炭素の吸収
3つ目は整備・植林で二酸化炭素の吸収量を増やすことです。
植物はエネルギーを得るため光合成をおこないます。
その際、大量の二酸化炭素を吸収します。
この作用を利用して、大気中の二酸化炭素を吸収します。
普段、私たちはどのくらい二酸化炭素を排出しているのでしょうか。
人間1人が呼吸によって排出する1年間の二酸化炭素量は320kgです。
これはスギ23本分の吸収量に匹敵します。
自動車1台の排出量は年間2,300kgでスギ160本に相当します。
1世帯の排出量は年間6,500kgでスギ460本の吸収量と同じです。
二酸化炭素を効率よく吸収してもらうには、山林を整備・植林する必要があります。
荒れた山林を整備することで、木々が成長しやすい環境を整え、二酸化炭素の吸収を促します。
二酸化炭素回収技術の実用化
4つ目は工場の排ガスや大気中の二酸化炭素を他の物質と分離し回収することです。
二酸化炭素を回収する技術のことをCCSといいます。
発電所や工場で排出された二酸化炭素を他の気体から分離し、地中深くにためておきます。
北海道苫小牧市にある実証実験センターでは、日本初の大規模なCCSの実験が行われています。
では、貯めた二酸化炭素を有効に使う方法はないのでしょうか。
回収した二酸化炭素を利用することをCCUといいます。
二酸化炭素を溶接やドライアイスに利用する直接利用や、二酸化炭素に含まれる炭素を再利用するカーボンリサイクルの研究も進んでいます。
カーボンニュートラル燃料の使用
5つ目はカーボンニュートラル燃料を使用することです。
水素と二酸化炭素を合成して製造する合成燃料が、カーボンニュートラル燃料の代表です。
二酸化炭素はCCSで回収されたものを使いますが、将来的には大気中から直接分離・回収することも想定しています。
水素は電気分解によって作り出されますが、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー由来の電力でつくるか、石油・石炭などの化石燃料を使って生み出された水蒸気から取り出す方法の2種類あります。
このうち、再生可能エネルギー由来の電力で生み出した水素を「e-fuel」といいます。
e-fuelを使うと二酸化炭素を新規で発生させることがないため、カーボンニュートラルに貢献できます。
まとめ
今回はカーボンニュートラルについて解説しました。
近年増加している異常気象の原因の一つとして地球温暖化を挙げる研究者は多数存在します。
こうした危機感を背景に各国で進められているのがカーボンニュートラルです。
私たちも省エネ性能が高い機器を導入したり、断熱性能の高い家を建てたり、太陽光発電など再生可能エネルギーを導入することで温室効果ガスの排出削減に貢献できます。
自分たちでできる温暖化防止について、考えてみてはいかがでしょうか。
▼関連記事はこちら
この記事の監修者
『お客様に寄り添うこと』をモットーに日々の業務に取り組んでおります。
太陽光発電の活用方法や蓄電池の導入などのご相談は年間2000件以上頂いており、真摯に問題解決に取り組んできました。
光熱費削減に関するお悩み等ございましたら、お気軽にご相談下さい。
光熱費削減コンサルタント
中田 萌ご相談やお見積もりは
完全無料です!