ソーラーパネルの寿命は何年?廃棄するときはどうすればいい?
ソーラーパネルは太陽光発電のために必要なパネルで、全国各地の住宅や事業所の屋根、平地の産業用発電所で使用されています。このパネルが大量廃棄される時代が来ると心配されています。
そもそも、ソーラーパネルの寿命はどのくらいなのでしょうか。
今回はパネルの寿命や大量廃棄の見通し、大量廃棄に伴って発生が心配されている問題、10kWh以上の発電設備で義務付けられた廃棄費用の積み立てについて解説します。
目次
ソーラーパネルと太陽光パネルは同じもの
ソーラーパネルとは、太陽光を使って発電するために必要な設備のことです。
太陽光パネルや太陽電池モジュールとも言いますが、いずれも同じものです。
パネルはフレームやガラス、太陽電池セルなどからできており、太陽電池セルに光が当たることで電気を生み出す仕組みです。
光のエネルギーにより物質の中から電子が飛び出す光電効果を使って発電します。
ソーラーパネルの寿命は何年?
ソーラーパネルの寿命はどのくらいなのでしょうか。
パネルの法定耐用年数は17年ですが、実際の寿命はそれよりもかなり長く見積もられています。
製品にもよりますが、おおむね25〜30年程度で寿命を迎えると考えられています。
使用環境によってはもっと長く使えるかもしれません。
太陽光発電協会が経済産業省の調達価格等算定委員会に出した資料によれば、今から25年前の1998年に導入されていた太陽光発電設備は15,596件です。
これらの設備が寿命を迎えつつあるのが現状です。
出典:経済産業省
寿命が尽きたパネルの大量廃棄
電力の固定価格買取制度のおかげで、ソーラーパネルの普及数は劇的に増加しました。
制度が始まった2012年以降、設置数は飛躍的に増加しています。これらのパネルは2030年代に一気に寿命を迎え、大量に廃棄されると予想されています。
廃棄時期やリユース・リサイクルについて見てみましょう。
大量に廃棄されるのは2030年代半ば以降
ソーラーパネルが飛躍的に増加した理由にFIT制度の開始があります。
FIT制度とは、太陽光発電など再生可能エネルギーによって生み出された電力を一定期間、固定価格で買い取る制度です。
制度が始まった2012年の10kW未満の買取価格は1kWhあたり42円でした。
現在の19円と比べると2倍以上の買取価格でしたので、売電収入だけでもかなりの金額を得られました。
この仕組みも導入により2012年には累計件数が140万件の大台を突破しました。
前年と比べると40万件以上の増加となります。
出典:経済産業省
以後、2010年代を通じて太陽光発電の導入件数は増加し続けました。
このとき設置された設備が2030年代に相次いで寿命を迎え、大量廃棄されるのではないかと懸念されています。
資源エネルギー庁は「太陽電池モジュール排出見込量」で、排出量が2030年代を通じて増加していくと予測しています。
そうなると、最終処分場をかなり圧迫してしまうのではないかと懸念しています。
廃棄の仕組みづくりが必要
私たちは大量廃棄されるソーラーパネルとどのように向き合えばよいのでしょうか。
重要なことは廃棄に関する仕組みづくりを進めることです。
ソーラーパネルは産業廃棄物として処理されています。
産業廃棄物は廃棄物処理法の規定に従い適切に処分しなければなりません。
適切な処理が必要な理由は、パネルに含まれる鉛やセレン、カドミウムなどの重金属が健康被害の原因となる可能性があるからです。
これらの物質が漏れださないよう専門業者が各地に処分する必要があります。
埋め立てるにしても、一般的な埋立地ではなく水漏れを防ぐ管理型最終処分場に埋め立てるなどの配慮が必要なのです。
さらに、大量に発生する廃棄物が最終処分場そのものを圧迫するのではないかといった件もありますので、対策を考えなければなりません。
パネルのリユース・リサイクルも検討中
パネルそのものを廃棄物として処理するだけではなく、パネルのリユースやリサイクルも検討する必要があります。
現状、パネルのリユースはモジュールを手作業でアルミフレームとガラスセルに分解して行われています。
ガラスセルは粉砕され、アスファルトとして使用されたり、埋め立てられたりしています。
しかし、先ほども述べたように有害物質を含むパネルは最終処分に手間がかかるため、管理型最終処分場の容量を圧迫してしまう可能性があります。
そこで必要なのがリユースです。
まだ使えるパネルを年数に関わらず再利用する仕組みの確立が必要でしょう。
リサイクルについても課題があります。
メンテナンスなどにより大量に発生した廃棄パネルが発電所内で放置されているケースや処理後の再資源化が確立されていないケースなどが見られます。
安定的にリサイクル処理をする仕組みづくりを早急に行わなければ、パネルの廃棄にリサイクルが追いつかない事態になりかねません。
パネルの廃棄に関する懸念
リユースやリサイクルの仕組みの確立が遅れてしまうと、大量廃棄されたパネルの不法投棄が心配されます。
そうなると、パネルから有害物質が拡散してしまう恐れがあります。
これらの懸念についてみてみましょう。
不法投棄が増える恐れがある
ソーラーパネルは建物を取り壊すときなどに一緒に廃棄されるのが普通です。
事業用であれば借地期間の終了時に廃棄される可能性が高いでしょう。
住宅用はともかく、事業用のパネルは一度に大量に廃棄されるため、処理費用が不足していると不法投棄される恐れがあります。
産業廃棄物であるパネルを不法投棄すると、個人であれば5年以下の懲役に処せられたり、1,000万円以下の罰金などを科されます。法人であれば3億円以下の罰金を科せられます。
しかし、パネルの所有者が廃棄物ではなく有価物だと主張して放置するケースが考えられます。
こうしたケースを防ぐためには、事前に処理費用の積み立てなどを行う仕組みを作らなければなりません。
あるいは、廃棄費用を惜しんで山林原野などに不法投棄する恐れも否定できません。
有害物質が拡散する恐れがある
パネルには中毒症状を引き起こす鉛やセレン、カドミウムなどの重金属が含まれています。
鉛は神経系や腎臓、造血機能に障害を引き起こすことが知られています。
セレンであれば消火器障害や神経過敏症、カドミウムであれば腎臓障害や骨軟化症を引き起こします。
カドミウムはイタイイタイ病の原因物質でもあります。
パネルを放置し、有害物質が流れ出し拡散してしまうと健康被害を引き起こす可能性もあるのです。
10kWh以上の太陽光発電設備は廃棄費用の積み立てが義務化
2022年4月から施行された改正再エネ特措法では、10kWh以上の全ての太陽光発電設備について、廃棄費用の積み立てが義務付けられました。
積み立て費用は供給したエネルギー量と国が毎年定める解体等積み立て基準額によって決まります。
住宅に関しては多くの場合10kWh以下ですので、積み立ての対象となりません。
しかし、投資などで太陽光発電設備を保有している場合は積立義務が発生しますので注意しましょう。
まとめ
今回はソーラーパネルの寿命に関連する事柄をまとめました。
パネルの寿命はだいたい25〜30年程度で、2030年代に廃棄量が急増すると予想されています。
それまでに廃棄の仕組みづくりやリユース・リサイクルの効率化を図らなければなりません。
現状のまま、何の手も打たない状態で放置すれば不法投棄が増えたり、有害物質が拡散してしまう恐れが否定できないからです。
10kWh以上の設備については廃棄費用の積み立てが義務付けられましたが、個人住宅の場合であっても廃棄するときに備え、費用を積立てておくとよいでしょう。
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