太陽光発電を農地に設置する方法と注意点

目次
農地での太陽光発電設置の基本知識
農地転用と太陽光発電の関係
農地に太陽光発電システムを設置する場合、農地法による農地転用許可が必要となるケースがほとんどです。農地は食料生産の重要な基盤として法的に保護されており、その用途変更には厳格な手続きが求められます。
農地転用許可は、設置する太陽光発電システムの規模や農地の区分によって手続きが異なります。一般的に、全量型の太陽光発電設備を設置する場合は農地転用が必要となり、営農継続型の場合は一時転用許可で対応可能な場合があります。
農地の区分と設置可能性
農地は立地条件や農業生産力によって第1種から第3種まで区分されており、太陽光発電設置の許可難易度は農地区分によって大きく異なります。
第1種農地は良好な営農環境にある農地で、原則として転用は認められません。第2種農地は市街地化が見込まれる農地で、立地条件により転用が検討されます。第3種農地は市街地にある農地で、比較的転用許可が得られやすい区分です。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の特徴
ソーラーシェアリングの仕組み
営農型太陽光発電は、農地の上部空間に太陽光パネルを設置し、農業と発電事業を同時に行う革新的なシステムです。パネルの下では従来通り農作物を栽培し、上部では太陽光発電を行うことで、限られた土地を有効活用できます。
このシステムでは、パネルの設置高さや間隔を適切に調整することで、作物に必要な日射量を確保しながら発電を行います。一般的に、作物に必要な日射量の70~80%程度を確保できるよう設計されます。
営農継続の条件
営農型太陽光発電を実施するには、農業経営の継続が法的要件として求められます。具体的には、設置前の農業収入の8割以上を維持することが原則とされており、定期的な報告と検査を受ける必要があります。
また、設置期間は一時転用許可により最大20年間とされ、期間満了時には更新手続きが必要です。この期間中、農業従事者としての責任を継続して果たすことが求められます。
農地での太陽光発電設置にかかる費用
初期投資費用の内訳
農地での太陽光発電設置費用は、1kWあたり35万円~40万円程度が基準となります。一般的な家庭用太陽光発電システム(4kW~5kW)を導入する場合の費用相場は140万円~200万円程度が目安となります。
※太陽光パネルの設置費用の相場は、パネルの種類や設置面積、工事内容などによって大きく異なります。
農地での設置では、通常の住宅用設置に加えて農地転用手続き費用、基礎工事費用、送電線工事費用などが追加で必要となる場合があります。
営農型の場合の追加費用
営農型太陽光発電では、農業継続に配慮した特殊な架台設備が必要となり、通常の野立て設置より高額になる傾向があります。支柱の高さ確保や農作業に支障のない構造設計により、設置費用は通常の1.2~1.5倍程度となることが一般的です。
また、定期的な営農状況報告や検査対応のための管理費用も継続的に発生します。これらの費用も事前に計画に含めて検討することが重要です。
法的手続きと必要な許可
農地転用許可申請の流れ
農地転用許可申請は、市町村農業委員会への申請から都道府県知事の許可まで、通常3ヵ月~6ヵ月程度の期間を要します。申請書類の準備から許可取得まで、専門的な知識と綿密な準備が必要です。
申請には土地利用計画書、事業計画書、資金計画書、周辺農地への影響調査書など多数の書類が必要となり、地域の農業委員や関係機関との事前調整も重要な要素となります。
電力会社との系統連系手続き
太陽光発電システムの電力を売電するには、電力会社との系統連系申請が必要で、申請から承認までに通常3ヵ月~6ヵ月程度を要します。(※電力会社との系統連系を行う場合、経年劣化が早まることがあります)
系統連系容量の制約により、地域によっては接続制限がかかる場合もあるため、事前に電力会社への相談を行うことが重要です。
売電収入と採算性の検討
売電価格と収益性
住宅用太陽光発電(10kW未満)の売電価格は、1kWhあたり15円となっています。※設置年度や電力会社によって異なります。
農地での太陽光発電事業の採算性は、初期投資費用、年間発電量、売電価格、維持管理費用を総合的に評価して判断する必要があります。一般的に投資回収期間は10~15年程度とされていますが、設置条件により大きく変動します。
営農収入との複合効果
営農型太陽光発電では、農業収入と売電収入の両方を得られるため、単一事業より高い収益性を期待できます。ただし、作物の収量減少リスクや管理コストの増加も考慮した慎重な事業計画が必要です。
作物の選定も重要な要素で、日陰に強い品種や高付加価値作物を選択することで、限られた日射条件下でも安定した農業収入を確保できます。
設置時の注意点とリスク管理
周辺環境への配慮
農地での太陽光発電設置では、周辺農地への日照阻害や景観への影響を最小限に抑える配慮が必要です。設置計画の段階で近隣農家や地域住民との合意形成を図ることが、事業の円滑な実施につながります。
また、排水処理や土壌への影響についても十分な検討が必要で、設置後の環境モニタリングを継続的に実施することが求められます。
維持管理とメンテナンス
太陽光発電システムの維持管理では、定期的な清掃、点検、故障対応が必要です。農地環境では土埃や飛散物による汚れが多く、通常の住宅用設置よりも頻繁な清掃が必要となる場合があります。
営農型の場合は農作業との調整も必要で、収穫期や農薬散布時期には特別な配慮が求められます。
将来的な処分と撤去について
設備の廃棄処理
太陽光発電設備の廃棄等費用の積立ては2022年7月1日から義務化されており、10kW以上の太陽光発電設備については、発電事業者が廃棄費用を事前に積み立てることが求められています。
太陽光パネルの処分費用は1枚あたり5,000円からが相場とされており、事業計画時に将来の処分コストも含めた資金計画を立てることが重要です。
農地復旧の責任
営農型太陽光発電の許可期間満了時や事業撤退時には、農地を原状回復して農業利用可能な状態に戻す義務があります。この復旧費用も事業計画に含めて検討し、必要に応じて保証金の積立てを行うことが求められます。
専門家への相談の重要性
農地での太陽光発電事業は、農地法、電気事業法、建築基準法など多くの法令が関わる複雑な事業です。適切な計画策定と円滑な事業実施のため、農地転用や太陽光発電に精通した専門家への相談が不可欠です。
太陽光発電システムの設置工事は、一般的な住宅用システムの場合、1~2日程度で完了します。工事前には電力会社への連系申請や各種手続きが必要で、申請から工事完了まで全体では3~6ヶ月程度の期間を要することが一般的です。
設置環境や配線の複雑さ等により費用は変動します。詳しくはお気軽にリノベステーションにお問い合わせください。
よくある質問
農地に太陽光発電を設置するには必ず農地転用が必要ですか?
全量型の太陽光発電設備を設置する場合は農地転用が必要ですが、営農型太陽光発電の場合は一時転用許可で対応可能です。ただし、営農継続が条件となり、農業収入の8割以上維持が求められます。
営農型太陽光発電で作物の収量はどの程度減少しますか?
適切に設計された営農型太陽光発電では、作物に必要な日射量の70~80%程度を確保できるため、収量減少は20~30%程度に抑えられるとされています。ただし、作物の種類や栽培方法により異なります。
農地での太陽光発電設置費用は住宅用より高くなりますか?
基本的な設置費用は1kWあたり35万円~40万円程度と同等ですが、農地転用手続き費用や基礎工事費用、営農型の場合は特殊架台費用などが追加で必要となり、総費用は高くなる傾向があります。
農地転用許可が下りない場合はありますか?
第1種農地では原則として転用は認められず、第2種農地でも立地条件により許可が困難な場合があります。事前に農業委員会や専門家に相談し、転用可能性を確認することが重要です。
太陽光発電設備の撤去時に農地復旧費用はどの程度かかりますか?
設備の規模や設置方法により異なりますが、営農型の場合で1kWあたり10万円~20万円程度が目安とされています。事業計画時に復旧費用の積立ても検討する必要があります。
この記事の監修者

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