鉛蓄電池の用途とは?家庭から産業まで活用される理由

目次
鉛蓄電池の基本的な仕組みと特徴
鉛蓄電池は、正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を使用した二次電池の一種です。1859年にフランスの物理学者ガストン・プランテによって発明された歴史ある蓄電池技術として、現在でも幅広い分野で活用されています。
鉛蓄電池の主な特徴
鉛蓄電池は他の蓄電池と比較して、以下のような特徴を持っています。
製造コストが比較的安価で大容量化しやすいことから、多くの用途で採用されています。また、充電・放電の効率が良く、瞬間的に大きな電流を供給できる特性があります。
一方で、重量が重く、充放電サイクル数が他の蓄電池と比較して少ないという特性もあります。最新のリチウムイオン蓄電池の充放電サイクル数が6,000回から12,000回程度であるのに対し、鉛蓄電池は一般的に500回から1,500回程度となっています。
自動車分野での鉛蓄電池の用途
自動車用バッテリーとしての活用
自動車の始動用バッテリーとして鉛蓄電池は最も一般的に使用されています。エンジン始動時に必要な大電流を瞬間的に供給できる特性から、ガソリン車やディーゼル車のスターターバッテリーとして広く採用されています。
また、車載電子機器への電力供給、ライトやエアコンなどの電装品への電力供給も重要な役割です。近年の自動車は電子制御システムが高度化しており、エンジン停止時でも各種システムを維持するための電力源として重要性が増しています。
電気自動車やハイブリッド車での補助電源
電気自動車やハイブリッド車においても、メインバッテリーとは別の補助電源として鉛蓄電池が使用されるケースがあります。12V系の電装品への電力供給や、安全システムのバックアップ電源として機能しています。
産業・業務用途での鉛蓄電池の活用
非常用電源システム
病院や通信施設、データセンターなどの重要施設では、停電時の非常用電源として鉛蓄電池が広く使用されています。大容量で安定した電力供給が可能で、メンテナンスも比較的容易なことから、UPS(無停電電源装置)のバッテリーとして採用されることが多くあります。
フォークリフトなどの産業車両
工場や倉庫で使用されるフォークリフトの動力源として、鉛蓄電池は長年にわたって使用されています。重量のある鉛蓄電池はフォークリフトの重心を安定させる効果もあり、作業時の安全性向上にも寄与しています。
近年はリチウムイオン蓄電池を採用するフォークリフトも増えていますが、コストパフォーマンスの観点から鉛蓄電池を選択する事業者も多く存在します。
家庭用太陽光発電システムでの鉛蓄電池
家庭用蓄電池システムでの位置づけ
家庭用太陽光発電システムにおいて、発電した電力を蓄える蓄電池として鉛蓄電池が使用される場合があります。家庭用蓄電池の費用相場は容量1kWhあたり20万円~30万円程度ですが、鉛蓄電池はリチウムイオン蓄電池と比較して初期費用を抑えることができます。
ただし、蓄電池の寿命は30年前後とされる中で、鉛蓄電池の寿命は一般的に5年から10年程度と短いため、ランニングコストを含めた総合的な検討が必要です。
系統連系システムでの活用
太陽光発電システムで電力会社との系統連系を行う場合、蓄電池システムも連系対象となります。(※電力会社との系統連系を行う場合、経年劣化が早まることがあります)系統連系申請から承認までには通常3ヵ月~6ヵ月程度の期間を要するため、計画的な導入が重要です。
通信・電子機器分野での鉛蓄電池の用途
通信基地局のバックアップ電源
携帯電話の基地局や通信設備では、24時間365日の安定した通信サービスを提供するため、停電時のバックアップ電源として鉛蓄電池が重要な役割を果たしています。大容量で長時間の電力供給が可能な特性から、通信インフラの信頼性確保に欠かせない存在となっています。
防災・防犯システム
火災報知器や防犯システム、非常照明などの防災・防犯設備においても、鉛蓄電池が電源として使用されています。緊急時に確実に動作する必要があるこれらの設備では、信頼性の高い鉛蓄電池が選ばれることが多いです。
鉛蓄電池のメリットとデメリット
鉛蓄電池のメリット
製造コストが安く、大容量化が容易であることが最大のメリットです。また、リサイクル技術が確立されており、環境負荷を軽減できます。充電・放電効率が高く、大電流を瞬間的に供給できる特性も重要な利点です。
鉛蓄電池のデメリット
重量が重く、サイズが大きいことがデメリットとして挙げられます。充放電サイクル数が他の蓄電池と比較して少なく、寿命が短いことも課題の一つです。また、低温環境では性能が低下しやすい特性もあります。
鉛蓄電池と他の蓄電池技術の比較
リチウムイオン蓄電池との比較
リチウムイオン蓄電池は軽量コンパクトで、充放電サイクル数も多いという特徴があります。しかし、初期費用は鉛蓄電池と比較して高額になる傾向があります。用途や設置環境、予算に応じて適切な選択を行うことが重要です。
NAS電池との比較
NAS電池は大容量の電力貯蔵に適した蓄電池で、寿命は15年程度となっています。主に産業用途で使用されており、家庭用としては鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池が一般的です。
鉛蓄電池の将来性と技術動向
技術改良による性能向上
近年、鉛蓄電池の技術改良により、従来の課題であった寿命の短さや充放電サイクル数の少なさが改善されつつあります。新しい電極材料や電解液の開発により、性能と耐久性の向上が期待されています。
環境配慮とリサイクル
鉛蓄電池は高いリサイクル率を誇る蓄電池として知られており、使用後の適切な処理により環境負荷を最小限に抑えることができます。持続可能な社会の実現に向けて、リサイクル技術の更なる向上が進められています。
よくある質問
鉛蓄電池の寿命はどのくらいですか?
鉛蓄電池の寿命は使用環境や充放電の方法によって異なりますが、一般的に5年から10年程度とされています。定期的なメンテナンスを行うことで寿命を延ばすことが可能です。
鉛蓄電池は家庭用太陽光発電システムに適していますか?
鉛蓄電池は初期費用を抑えて蓄電システムを導入したい場合には選択肢の一つとなります。ただし、寿命が短いため、長期的なコストパフォーマンスを考慮してリチウムイオン蓄電池との比較検討をおすすめします。
鉛蓄電池のメンテナンスは必要ですか?
密閉型の鉛蓄電池は基本的にメンテナンスフリーですが、開放型の場合は定期的な電解液の補充が必要です。また、端子部の清掃や充電状態の確認など、定期点検を行うことで長期間安定して使用できます。
鉛蓄電池の処分方法について教えてください
鉛蓄電池には鉛や硫酸などの有害物質が含まれているため、一般廃棄物として処分することはできません。自動車用品店や蓄電池販売店で回収してもらうか、適切な処理業者に依頼する必要があります。
鉛蓄電池導入時の工事費用はどのくらいかかりますか?
蓄電池の標準的な設置工事費用は20万円~35万円程度ですが、設置環境や配線の複雑さ等により変動します。詳しくはお気軽にリノベステーションにお問い合わせください。
この記事の監修者

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