第1章：「DR」「VPP」「DER」とは？未来の電力網を支える3つのキーワード

これらの言葉は密接に関連しており、セットで理解することが重要です。再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力の安定供給を維持するために生まれた新しい考え方と技術です。

1-1. DER (Distributed Energy Resources)：分散型エネルギー資源

DERとは、電力会社の大規模な発電所とは対照的に、**需要家（電気を使う側）の近くに分散して存在する比較的小規模なエネルギー設備**のことを指します。具体的には、以下のようなものがDERに含まれます。

• 家庭や工場の**太陽光発電システム**
• **家庭用蓄電池**、電気自動車（EV）のバッテリー
• コージェネレーションシステム（自家発電設備）
• 需要家側で制御可能なエアコンなどの負荷設備

これまでは個別に利用されてきたこれらのDERを、IT技術を使って束ね、一つの大きな力として活用しようというのが、VPPやDRの基本的な考え方です。

1-2. VPP (Virtual Power Plant)：仮想発電所

VPPとは、上記のような**DERを、IoTなどの高度なエネルギー管理技術（アグリゲーション技術）によって束ね、あたかも一つの大きな発電所（Power Plant）のように機能させる**仕組みのことです。「仮想」という名前の通り、物理的な発電所を新たに建設するわけではありません。

電力需要が高まるピーク時などに、VPPを通じて各家庭の蓄電池から放電を促したり、太陽光発電の出力を調整したりすることで、電力システム全体の需給バランスを調整する役割を担います。

1-3. DR (Demand Response)：デマンドリスポンス

DRとは、電力の需要（Demand）に応じて、需要家側が電力の使用量を変化させること（Response）を指します。大きく分けて2種類あります。

• 上げDR (供給力)：電力供給が不足しそうな時に、需要家側が蓄電池からの放電や自家発電設備の稼働により、電力システムに電気を供給する（または購入電力を減らす）。
• 下げDR (需要抑制)：電力供給が不足しそうな時に、需要家側が一時的に電力使用量を減らす（例：エアコンの設定温度を調整する、工場の稼働を一部停止するなど）。

VPPは、このDRを実現するための重要な基盤となります。VPPを通じて、アグリゲーター（DERを束ねる事業者）が各家庭や事業所にDRへの協力を要請し、電力需給のバランスを取るのです。

出典：資源エネルギー庁「VPP・DRとは」

【章のまとめ】

DER（太陽光・蓄電池など）をVPP（仮想発電所）として束ね、DR（需要調整）に活用することで、電力の安定供給と再生可能エネルギーの有効活用を目指す。これが、これらのキーワードが示す未来の電力システムの姿です。

第2章：家庭の太陽光・蓄電池が「発電所」になる？VPP/DRへの参加メリット

では、これらの仕組みに家庭が参加することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか？自宅の設備が社会の役に立つだけでなく、経済的な恩恵も期待できます。

2-1. あなたの家の蓄電池が「調整力」になる

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