太陽光温水器【2025年版】仕組み・メリット・デメリット・費用

太陽光温水器とは？仕組みと太陽光発電との違い

太陽のエネルギーを利用する住宅設備として、「太陽光温水器」（太陽熱温水器とも呼ばれます）があります。太陽光発電システムと混同されることもありますが、その仕組みや目的は全く異なります。このセクションでは、太陽光温水器がどのような仕組みでお湯をつくるのか、そして太陽光発電システムとの違いは何か、基本的な知識を分かりやすく解説します。導入を検討する最初のステップとして、まずは基礎を理解しましょう。

基本的な仕組み：太陽の「熱」でお湯をつくるエコな装置

太陽光温水器は、太陽の光エネルギーではなく、太陽の「熱エネルギー」を利用して、水を直接温める装置です。特別な燃料や電気（一部のタイプを除く）を使わずに、自然の力でお湯をつくり出す、非常にエコな給湯システムと言えます。主に住宅の屋根の上などに設置されます。

主な構成機器：太陽熱を集める「集熱器」とお湯を貯める「貯湯タンク」

太陽光温水器の主な構成要素は、シンプルに「集熱器」と「貯湯タンク」です。

• 集熱器: 太陽の熱を集める部分です。ガラスと吸収板で構成され、太陽熱を効率よく吸収し、内部の水を温めます。
• 貯湯タンク: 集熱器で温められたお湯を貯めておくタンクです。保温材で覆われており、お湯が冷めにくい構造になっています。 この二つが一体になっているタイプ（自然循環型）と、分離しているタイプ（強制循環型）があります。

シンプルな原理：自然の力で水を温める

最も一般的な自然循環型の太陽光温水器は、水の温度変化による自然な対流を利用してお湯をつくります。集熱器で温められた水は軽くなって上昇し、貯湯タンクの上部へ移動します。同時に、タンク下部の冷たい水が重力で集熱器へ流れ込み、再び温められます。この自然な循環によって、タンク全体のお湯が温められていくという、非常にシンプルな原理で動作します。（強制循環型はポンプを使います）

太陽光「発電」システムとの決定的な違いを理解しよう

「太陽光」という名前が付くため、太陽光発電システムと混同されやすいですが、両者は全く異なるものです。その違いを明確に理解しておきましょう。

目的の違い：「お湯」をつくるか「電気」をつくるか

最大の違いは、エネルギーの利用目的です。太陽光温水器は太陽の「熱」を利用して「お湯」をつくります。一方、太陽光発電システムは太陽の「光」を利用して「電気」をつくります。目的が異なるため、導入によって期待できる効果も異なります。太陽光温水器は給湯にかかる光熱費削減が主な目的であり、太陽光発電は電気代削減や売電収入（現在は自家消費が主）が目的となります。

システム構成と期待できる効果の違い

システム構成も異なります。太陽光温水器は集熱器と貯湯タンクが中心ですが、太陽光発電システムは太陽光パネル、パワーコンディショナなどが主要機器です。期待できる効果も、太陽光温水器は給湯光熱費の削減、太陽光発電システムは家庭全体の電気代削減や非常用電源としての役割が主となります。両方を同時に設置することも理論上は可能ですが、屋根面積などの制約があります。

「太陽熱利用システム」の中での太陽光温水器の位置づけ

太陽の熱エネルギーを利用するシステム全体を「太陽熱利用システム」と呼びます。太陽光温水器は、この太陽熱利用システムの一種です。その中での位置づけを見てみましょう。

太陽熱利用システムの種類（温水器とソーラーシステム）

太陽熱利用システムは、大きく分けて「太陽光温水器（太陽熱温水器）」と「ソーラーシステム」の二種類があります。

• 太陽光温水器: 比較的シンプルな構造で、主に給湯に利用されます。
• ソーラーシステム: より大規模で、集熱器で温めた熱媒（不凍液など）を循環させ、貯湯タンクの水を間接的に温めます。給湯だけでなく、暖房にも利用できるタイプがあります。

太陽光温水器のタイプ（自然循環型/強制循環型）

この記事で主に扱う太陽光温水器には、前述の通り二つのタイプがあります。

• 自然循環型: 集熱器と貯湯タンクが一体で屋根上にあるタイプ。構造がシンプルで安価な傾向。
• 強制循環型: 集熱器のみを屋根上に設置し、貯湯タンクは地上などに置くタイプ。ポンプで循環させるため効率が良いが、高価で構造が複雑。 これらについては後ほど詳しく解説します。

太陽光温水器を導入するメリットとは？

太陽光温水器を導入することには、特に給湯に関わる光熱費の削減という大きなメリットがあります。その他にも、環境面での利点や、構造上のメリットも存在します。

メリット1：給湯にかかる光熱費を大幅に削減！

家庭のエネルギー消費の中で、給湯が占める割合は意外と大きいものです。太陽光温水器は、この給湯にかかるエネルギーコストを大幅に削減できる可能性があります。

ガス代や電気代の節約に直結

太陽が出ている日中に太陽光温水器でお湯を沸かすことができれば、その分、ガス給湯器や電気温水器（エコキュート含む）を稼働させる必要がなくなり、ガス代や電気代を直接的に節約できます。特に日中にお湯を使うことが多い家庭や、家族の人数が多く給湯量が多い家庭ほど、その効果を実感しやすいでしょう。

年間どれくらいお得？削減効果の目安

削減できる光熱費の額は、設置する地域の日射量、季節、家族構成、お湯の使い方、現在使用している給湯器の種類などによって大きく異なります。あくまで目安ですが、一般的には年間の給湯光熱費の30%～60%程度を削減できる可能性があるとも言われています。正確な効果を知るには、設置業者によるシミュレーションが必要です。

メリット2：CO2排出量を削減し、環境に優しい

太陽光温水器は、環境負荷の低減にも貢献できるエコなシステムです。地球環境への配慮を重視する方にとっては、大きな導入理由となるでしょう。

化石燃料の使用を減らし、エコに貢献

太陽熱という自然エネルギーを利用してお湯を沸かすため、ガスや灯油といった化石燃料の使用量、あるいは電気をつくるための化石燃料消費量を削減することにつながります。これは、地球温暖化の原因となるCO2排出量の削減に直接貢献します。

環境負荷の少ない給湯方法

太陽光温水器は、エネルギー変換の過程でのロスが少なく、太陽熱を効率よくお湯に変えることができます。他の給湯器と比較しても、運転時の環境負荷が非常に小さい、クリーンで持続可能な給湯方法の一つと言えます。

メリット3：比較的シンプルな構造を持つ機器も

特に普及している自然循環型の太陽光温水器は、他の給湯設備と比較して構造がシンプルであるという特徴があります。

（特に自然循環型は）構造が単純で故障リスクが低い傾向

自然循環型は、ポンプなどの複雑な機械部品を使わずに、水の自然対流だけでお湯を循環させます。構造が単純なため、比較的故障しにくく、メンテナンスの手間も少ないと言われています。ただし、全くメンテナンスフリーというわけではありません。

（機種によっては）導入費用が比較的抑えられる可能性

構造がシンプルな自然循環型は、太陽光発電システムや強制循環型のソーラーシステム、エコキュートなどと比較して、導入費用が安価な場合があります。初期投資を抑えて太陽エネルギー利用を始めたい場合に、検討しやすい選択肢となる可能性があります。（ただし、価格は製品や工事内容によります）

デメリットと注意点：導入前に知っておきたいこと

メリットがある一方で、太陽光温水器にはデメリットや注意点も存在します。導入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、事前にリスクや制約を理解しておくことが非常に重要です。

デメリット1：天候次第でお湯の温度・量が不安定

太陽光温水器は太陽の熱を利用するため、その性能は天候に大きく左右されます。これが最大のデメリットと言えるかもしれません。

曇天・雨天時や夜間は十分なお湯が得られない

太陽が出ていない曇りや雨の日、そして夜間は、当然ながらお湯を沸かすことができません。また、日が照っていても、日射量が少ない日には、お湯の温度が十分に上がらなかったり、貯められるお湯の量が少なくなったりします。安定した給湯が常に保証されるわけではありません。

既存のガス給湯器などとの併用が一般的

上記の理由から、太陽光温水器だけで家庭の給湯をすべて賄うのは現実的ではありません。多くの場合、既存のガス給湯器や電気温水器などを補助的な熱源として併用し、太陽光温水器で沸いたお湯の温度が低い場合や、お湯が足りない場合に、補助給湯器で加熱・給湯する使い方になります。

デメリット2：冬場の凍結リスクとその対策

特に気温が低い地域では、冬場に配管や集熱器内部の水が凍結し、破損につながるリスクがあります。

特に寒冷地では配管等の凍結に注意が必要

外気温が氷点下になるような寒冷地では、貯湯タンクや集熱器、それらを繋ぐ配管内の水が凍結する可能性があります。水が凍ると体積が膨張し、配管や機器の破損を引き起こす恐れがあります。

凍結防止ヒーター等の対策や、対応製品の選択

凍結を防ぐため、自動で水を少量流し続ける機能や、電気ヒーターで配管を保温する凍結防止機能が付いている製品を選ぶ、あるいは別途対策を施す必要があります。寒冷地での設置を検討する場合は、凍結対策がしっかりしているか、そのためのランニングコスト（電気代）がどのくらいかかるかを確認することが重要です。

デメリット3：設置スペースと屋根への重量負荷

太陽光温水器、特に貯湯タンク一体型の自然循環型は、屋根の上に比較的大きな機器を設置する必要があります。

屋根上に貯湯タンクを置くタイプはかなりの重量

自然循環型は、集熱器に加えて、お湯を満たした貯湯タンク（200Lなら200kg以上）も屋根の上に設置するため、かなりの重量が屋根にかかります。設置する屋根には、その重量に耐えられる十分な強度が求められます。

設置可否判断には屋根の形状・強度・方角の確認が必須

設置を検討する際は、専門業者による現地調査で、屋根の形状、面積、方角（南向きが理想）、材質、そして何よりも強度を詳細に確認してもらう必要があります。古い家屋など、強度が不足している場合は設置できない、あるいは補強工事が必要になる場合があります。

デメリット4：水圧低下やデザイン性の問題

使い勝手や見た目に関するデメリットも考慮する必要があります。

自然循環型は水圧が低くなる傾向がある

自然循環型は、貯湯タンクが屋根上にあるため、水道直結の給湯器に比べて、シャワーなどの水圧（お湯の勢い）が低くなる傾向があります。特に2階以上にお風呂がある場合などは、水圧に不満を感じる可能性があります。強制循環型はこの問題は起こりにくいです。

屋根上の機器の見た目が気になる場合も

屋根の上に大きな集熱器や貯湯タンクが設置されるため、住宅の外観デザインを重視する方にとっては、その見た目が気になる場合があります。特に一体型の自然循環型は存在感が大きくなりがちです。

デメリット5：メーカー撤退・縮小による選択肢やサポート面の懸念

近年、太陽光温水器市場では、大手メーカーの撤退や事業縮小が相次いでいます。これは製品選びや将来のサポートに影響を与える可能性があります。

近年の市場動向と製品選択肢の現状

かつては多くのメーカーが太陽光温水器を製造・販売していましたが、エコキュートなどの高効率給湯器の普及や、太陽光発電システムの価格低下などにより、市場は縮小傾向にあります。そのため、現在では製品の選択肢が以前より限られている可能性があります。

メーカー保証や長期的なサポート体制の確認がより重要に

製品選択肢が少ないということは、万が一の故障時やメンテナンスの際に、部品の供給やサポートが受けにくくなるリスクも考えられます。そのため、導入を検討する際には、メーカーの事業継続性や、設置業者の長期的なサポート体制、保証内容などを、これまで以上に慎重に確認することが重要になります。

太陽光温水器の種類と選び方のポイント

太陽光温水器には、主に「自然循環型」と「強制循環型」の2種類があります。それぞれの仕組みと特徴を理解し、自宅の状況やニーズに合ったタイプを選ぶことが大切です。

主な種類：自然循環型と強制循環型の違い

設置方法や構造、性能、価格などが異なるため、それぞれのメリット・デメリットを比較検討しましょう。

自然循環型（一体型）：仕組み、メリット（安価・単純）、デメリット（重い・水圧低い）

集熱器と貯湯タンクが一体となって屋根の上に設置されるタイプです。水の温度差による自然な対流で循環するため、ポンプなどの動力は不要です。

• メリット: 構造がシンプルで故障しにくく、価格が比較的安い傾向があります。
• デメリット: 貯湯タンクも屋根上にあるため重量が重く、屋根への負担が大きい。水圧が低くなりやすい。デザイン性が劣る場合がある。 一般的な戸建て住宅で広く普及してきたタイプです。

強制循環型（分離型）：仕組み、メリット（軽量・高効率・水圧安定）、デメリット（高価・複雑）

集熱器のみを屋根上に設置し、貯湯タンクは地上など別の場所に設置するタイプです。集熱器とタンクの間は、ポンプを使って不凍液などの熱媒を強制的に循環させ、その熱でタンク内の水を温めます（間接加熱）。

• メリット: 屋根への重量負担が少ない。集熱効率が高く、水圧も水道圧とほぼ同じ。デザイン性が比較的良い。
• デメリット: 構造が複雑で、ポンプ等の動力が必要なため、価格が高く、故障のリスクも自然循環型より高い。設置スペースがより多く必要。

失敗しない！太陽光温水器の選び方（2025年版）

太陽光温水器を選ぶ際には、いくつかのポイントを押さえて、自宅の状況や使い方に合ったものを選ぶことが重要です。

家族の人数とお湯の使用量から貯湯容量を決める

まず考えるべきは、必要な貯湯タンクの容量です。一般的に、家族の人数×40～50リットル程度が目安とされますが、お湯の使い方（シャワーの頻度、湯船にお湯をためるかなど）によっても異なります。容量が小さいと湯切れしやすく、大きすぎると無駄が多くなります。家族構成やライフスタイルに合わせて選びましょう。

設置場所の条件（屋根・地上）を確認する

前述の通り、設置には屋根の強度や面積、方角などが重要です。必ず専門業者に現地調査を依頼し、設置が可能かどうか、最適な設置場所はどこかを確認しましょう。強制循環型の場合は、地上の貯湯タンク設置スペースも必要になります。

既存給湯器との連携方法を考える

太陽光温水器は、多くの場合、既存のガス給湯器や電気温水器と組み合わせて使用します。太陽光温水器で温めたお湯を、既存の給湯器を通してさらに加熱したり、そのまま給湯したりするなど、接続方法や連携の仕方によって、システムの効率や使い勝手が変わってきます。設置業者とよく相談し、最適な連携方法を検討しましょう。

メーカーの信頼性・保証・サポート体制を重視する

現在、太陽光温水器の市場はメーカーの選択肢が限られつつあるため、メーカーの信頼性や事業継続性、そして製品保証の内容、設置業者のアフターサポート体制を、これまで以上に慎重に確認することが極めて重要です。万が一の故障やメンテナンス時に、適切な対応を受けられるか、部品供給は大丈夫かなどを、契約前にしっかりと確認しましょう。

まとめ – 太陽光温水器を理解し、賢い選択を

太陽光温水器（太陽熱温水器）について、その仕組みからメリット・デメリット、種類、選び方まで解説しました。

太陽光温水器は、太陽の熱エネルギーを利用してお湯をつくる、環境に優しく、給湯にかかる光熱費を大幅に削減できる可能性のあるエコな設備です。

しかし、天候によって性能が左右される点、冬場の凍結リスク、設置条件（屋根強度・スペース）、水圧の問題、そして近年の市場縮小に伴うメーカー選択肢やサポート面の懸念など、導入前に理解しておくべきデメリットや注意点も少なくありません。

導入を検討する際は、自然循環型と強制循環型の違いを理解し、家族構成や設置場所の条件に合わせて適切なタイプ・容量を選びましょう。そして何よりも、信頼できるメーカー（事業継続性も考慮）と、しっかりとした技術・サポート体制を持つ設置業者を選ぶことが重要です。

メリットとデメリット、そして現在の市場状況を総合的に考慮し、ご自身の家庭にとって太陽光温水器が本当に最適な選択肢なのか、慎重に判断することをお勧めします。

太陽光温水器に関するQ&A

Q1: 太陽光温水器とエコキュート、どちらがお得ですか？

A1: 一概にどちらがお得とは言えません。太陽光温水器は日中の太陽熱を直接利用するため、晴天時の給湯コストは非常に低いですが、天候依存度が高いです。エコキュートは夜間電力でお湯を沸かすため天候に左右されませんが、電気代がかかります。初期費用、ランニングコスト、ライフスタイル、設置条件などを総合的に比較検討する必要があります。近年はエコキュートの方が主流となりつつあります。

Q2: 曇りや雨の日でもお湯は使えますか？

A2: 太陽光温水器は太陽熱がないと十分なお湯を作れません。曇りや雨の日は、お湯の温度が上がらないか、ぬるま湯程度になることが多いです。そのため、ほとんどの場合、ガス給湯器などの補助的な給湯器と併用し、太陽光温水器のお湯が不十分な場合に補助給湯器で加熱して使用します。

Q3: メンテナンスは必要ですか？寿命はどのくらい？

A3: 定期的な点検（水漏れ、配管の劣化、集熱器の汚れなど）が推奨されます。特に貯湯タンクの水抜き（年に1～2回程度）が必要な場合があります。寿命は製品や設置環境によりますが、一般的に15年～20年程度と言われていますが、部品交換が必要になることもあります。メーカーのサポート状況確認が重要です。

Q4: 設置費用はどのくらいかかりますか？

A4: 設置費用は、製品の種類（自然循環型/強制循環型）、容量、メーカー、工事内容（屋根工事、配管工事など）によって大きく異なります。比較的安価な自然循環型でも数十万円、高機能な強制循環型ではそれ以上の費用がかかるのが一般的です。必ず複数の業者から詳細な見積もりを取りましょう。

Q5: 今でも補助金はありますか？

A5: かつては国や多くの自治体で補助金制度がありましたが、現在（2025年4月時点）では、太陽光温水器単体を対象とした補助金制度は限定的になっている可能性が高いです。お住まいの自治体によっては独自の制度が残っている場合もありますが、期待はしすぎず、まずは自治体のウェブサイト等で最新情報を確認することをお勧めします。