太陽光発電買取制度の仕組み

目次
太陽光発電の買取制度とは
太陽光発電の買取制度は、住宅用太陽光発電システムで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る制度です。正式名称は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」といい、2012年に開始されました。
この制度により、一般家庭でも太陽光発電システムを導入することで、余剰電力を売電して収益を得ることが可能になりました。住宅用太陽光発電(10kW未満)の売電価格は、1kWhあたり15円とされており、設置年度や電力会社によって異なる場合があります。
買取制度の目的は、再生可能エネルギーの普及促進と、地球温暖化対策の推進です。個人が太陽光発電システムを導入する経済的メリットを創出することで、クリーンエネルギーの拡大を図っています。
買取価格の決定メカニズム
年度別買取価格の設定
太陽光発電の買取価格は、経済産業省の調達価格等算定委員会が毎年度見直しを行い、設定されています。買取価格は太陽光発電システムの設置コストや技術革新を考慮して決定されるため、年々低下傾向にあります。
2025年度の住宅用太陽光発電の買取価格は、1kWhあたり15円となっており、買取期間は10年間です。この価格は、太陽光発電システムを設置した年度の価格が適用されるため、早期導入による価格メリットが重要な要素となります。
買取価格の算定要素
買取価格の算定には、以下の要素が考慮されます。
太陽光発電システムの設置費用は、一般的には1kWあたり35万円~40万円程度とされており、パネルの種類や設置面積、工事内容などによって大きく異なります。この設置費用の低下が、買取価格の見直しに大きく影響しています。
運転維持費用やシステム利用率、設備利用率なども算定要素として含まれており、これらの数値の改善が買取価格の適正化につながっています。
売電収入の計算方法
基本的な売電収入の算出
売電収入は、「売電電力量×買取価格」で計算されます。一般的な家庭用太陽光発電システム(4kW~5kW)を導入する場合、年間発電量は約4,000kWh~5,000kWh程度となります。
このうち、自家消費分を除いた余剰電力が売電対象となるため、実際の売電量は家庭の電力使用パターンによって大きく変わります。平均的な家庭では、発電量の約60%~70%が売電可能とされています。
売電収入のシミュレーション
4kWの太陽光発電システムを設置した場合のシミュレーションを見てみましょう。
年間発電量を4,000kWhとし、そのうち2,400kWhを売電できると仮定します。売電価格15円/kWhで計算すると、年間売電収入は36,000円となります。
10年間の買取期間での総売電収入は360,000円となり、システム導入費用の回収に大きく貢献します。ただし、実際の発電量は地域の日照条件や設置角度、周辺環境などによって変動するため、詳細なシミュレーションが重要です。
買取期間と満了後の選択肢
10年間の買取期間
住宅用太陽光発電システムの買取期間は10年間と定められています。この期間中は、設置年度の買取価格が固定されるため、安定した売電収入を期待できます。
買取期間中は、電力会社に売電することが義務付けられており、設備の維持管理を適切に行う必要があります。システムの不具合や故障により発電量が低下した場合、売電収入にも影響が生じるため、定期的なメンテナンスが重要です。
買取期間満了後の選択肢
2019年から順次、買取期間が満了する太陽光発電システムが出てきており、「卒FIT」と呼ばれています。買取期間満了後は、以下の選択肢があります。
電力会社との新たな売電契約を結ぶ方法があります。この場合、買取価格は市場価格に基づいて決定され、FIT制度適用時よりも低い価格となることが一般的です。
自家消費を最大化する方法も注目されています。蓄電池を併設することで、昼間に発電した電力を夜間に使用し、電力会社からの電力購入を削減できます。家庭用蓄電池の費用相場は、容量1kWhあたり15万円~25万円程度とされており、4kWh~7kWhの蓄電池導入には60万円~175万円程度が目安となります。
太陽光発電システムの導入コスト
初期導入費用
太陽光発電システムの導入には、パネル代、パワーコンディショナー代、設置工事費などが必要です。一般的な家庭用太陽光発電システム(4kW~5kW)を導入する場合の費用相場は、140万円~200万円程度が目安となります。
太陽光パネルの設置費用の相場は、パネルの種類や設置面積、工事内容などによって大きく異なりますが、一般的には1kWあたり35万円~40万円程度です。高効率パネルや特殊な設置条件では、この範囲を超える場合もあります。
運転維持費用
太陽光発電システムは比較的メンテナンスが少ない設備ですが、定期的な点検や清掃が必要です。年間の維持費用は、システム容量によって異なりますが、一般的には年間1万円~3万円程度とされています。
パワーコンディショナーは電子機器であるため、15年~20年程度で交換が必要となる場合があります。交換費用は20万円~40万円程度が目安となり、長期的な運用コストとして考慮する必要があります。
投資回収期間の計算
投資回収期間の基本的な考え方
太陽光発電システムの投資回収期間は、「初期投資額÷年間メリット」で計算されます。年間メリットには、売電収入と電気代削減効果の両方が含まれます。
4kWシステムを160万円で導入し、年間売電収入が36,000円、電気代削減効果が48,000円とした場合、年間メリットは84,000円となります。この場合の投資回収期間は約19年となります。
投資回収期間に影響する要因
投資回収期間は、以下の要因によって大きく変わります。
初期投資額の違いが最も大きな要因です。システムの選択や設置条件、補助金の活用により、初期投資を抑えることで投資回収期間を短縮できます。
発電量も重要な要因です。日照条件の良い地域や、南向きの屋根への設置により発電量を最大化することで、投資回収期間を改善できます。
電気料金の上昇も投資回収期間に影響します。将来的な電気料金の上昇により、太陽光発電による電気代削減効果が高まり、投資回収期間が短縮される可能性があります。
蓄電池併設による相乗効果
蓄電池導入のメリット
蓄電池を併設することで、太陽光発電システムの効果を最大化できます。昼間に発電した電力を蓄電池に貯めることで、夜間や雨天時にも太陽光発電の電力を使用できるようになります。
蓄電池の寿命は30年前後とされており、太陽光発電システムと同程度の長期間にわたって効果を発揮します。停電時の非常用電源としても活用でき、災害対策の観点からも注目されています。
蓄電池導入のコスト効果
蓄電池の導入により、自家消費率を向上させることができます。買取期間満了後の売電価格低下に備えて、蓄電池を併設する家庭が増加しています。
蓄電池の費用対効果は、電気料金と売電価格の差によって決まります。電気料金が高く、売電価格が低いほど、蓄電池導入のメリットが大きくなります。
補助金制度の活用
国の補助金制度
太陽光発電システムや蓄電池の導入には、国や地方自治体からの補助金が用意されています。2025年度も継続的に補助金制度が実施されており、初期投資の負担軽減に大きく貢献しています。
国の補助金制度では、太陽光発電システムと蓄電池を同時導入する場合に、より手厚い補助が受けられる場合があります。補助金の申請条件や締切日は年度によって異なるため、最新情報の確認が重要です。
地方自治体の補助金
都道府県や市区町村レベルでも、独自の補助金制度を設けている場合があります。これらの補助金は国の補助金と併用できることが多く、さらなる負担軽減が可能です。
地方自治体の補助金は予算に限りがあるため、先着順での受付となることが一般的です。導入を検討する際は、早期に情報収集と申請手続きを行うことが重要です。
太陽光発電買取制度の今後の展望
制度の変遷と今後の方向性
太陽光発電の買取制度は、再生可能エネルギーの普及拡大とともに継続的に見直しが行われています。買取価格の段階的な引き下げは続いていますが、システム価格の低下により、経済性は一定程度維持されています。
今後は、自家消費を重視した制度設計への転換が進むと予想されます。蓄電池との組み合わせによる自家消費率の向上や、エネルギーマネジメントシステムの活用が重要なポイントとなります。
技術革新による影響
太陽光発電技術の革新により、発電効率の向上とコスト低下が続いています。高効率パネルの普及や、設置工事の効率化により、投資回収期間の短縮が期待されます。
蓄電池技術の進歩も重要な要素です。蓄電池の容量向上と価格低下により、太陽光発電システムとの組み合わせによる経済性がさらに向上する可能性があります。
よくある質問
Q1: 太陽光発電の買取価格はいつまで固定されますか?
A1:
住宅用太陽光発電システム(10kW未満)の買取価格は、設置年度から10年間固定されます。この期間中は、設置時の価格が保証されるため、安定した売電収入を期待できます。10年経過後は、市場価格に基づいた売電契約に移行するか、自家消費を中心とした運用に切り替えることが一般的です。
Q2: 太陽光発電システムの設置費用はどのくらいかかりますか?
A2:
一般的な家庭用太陽光発電システム(4kW~5kW)を導入する場合の費用相場は、140万円~200万円程度が目安となります。1kWあたりでは35万円~40万円程度が基準となりますが、パネルの種類や設置条件によって変動します。補助金制度を活用することで、初期投資を抑えることが可能です。
Q3: 蓄電池を併設するメリットは何ですか?
A3:
蓄電池を併設することで、昼間に発電した電力を夜間に使用でき、自家消費率を向上させることができます。買取期間満了後の売電価格低下に備えて、電気代削減効果を最大化できます。また、停電時の非常用電源としても活用でき、災害対策の観点からも有効です。蓄電池の寿命は30年前後とされており、長期間にわたって効果を発揮します。
Q4: 投資回収期間はどのくらいですか?
A4:
投資回収期間は、初期投資額や発電量、電気料金などによって異なりますが、一般的には15年~20年程度とされています。売電収入と電気代削減効果の両方を考慮した総合的なメリットで計算されます。日照条件の良い地域や、効率的なシステム設計により、投資回収期間を短縮することが可能です。
Q5: 補助金制度はどのように活用できますか?
A5:
国や地方自治体から太陽光発電システムや蓄電池の導入に対する補助金が提供されています。国の補助金と地方自治体の補助金は併用できることが多く、初期投資の負担を大幅に軽減できます。補助金の申請条件や締切日は年度によって異なるため、導入を検討する際は最新情報を確認し、早期に申請手続きを行うことが重要です。
この記事の監修者

『お客様に寄り添うこと』をモットーに日々の業務に取り組んでおります。
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