薄型太陽光パネルはどんなもの?ペロブスカイト型太陽電池を徹底解説!
私たちがよく目にする太陽光パネルは、板状の四角いタイプで、半導体にも使われるシリコンが使用されています。
最近注目を集めているのが、薄型の太陽光パネルです。
薄型太陽光パネルの代表であるペロブスカイト型は、1,000分の1ミリメートルよりも薄く、曲げて設置することが可能です。
今回の記事では、薄型太陽光パネルの代表であるペロブスカイト型の仕組みや特徴、メリット、扱う際の注意点などをまとめます。
目次
薄型太陽光パネル(ペロブスカイト型)の発明
2009年、桐蔭横浜大学の宮坂力教授らの研究グループは、シリコン素材の代わりにペロブスカイト結晶を用いた太陽電池の開発に成功しました。
この電池の仕組みや特徴をまとめます。
ペロブスカイト型太陽電池とは
ペロブスカイト型太陽電池とは、ペロブスカイトという鉱物と同じ構造を持つ結晶を使用して作られた太陽電池です。
ペロブスカイトは、電力を光に変える発光材料として研究されていました。
2009年、桐蔭横浜大学の宮坂力教授のグループは、この物質の持つ性質を利用し、太陽光から電気を生み出すことに成功しました。
開発当初は3%程度の変換効率しかありませんでしたが、数年後には10%以上の発電効率を達成します。
2021年、東芝は独自技術を開発して、太陽電池の変換効率を15.1%まで向上させました。
同社は2025年までに20%以上の変換効率達成を目指しています。
ペロブスカイト型の特徴
主な特徴は以下の3つです。
- 曲げられる
- 薄くて軽い
- 低コスト
- 室内の弱い光でも発電できる
太陽光パネルの主流であるシリコン型は、ペロブスカイト型のように曲げて使用することは困難です。
曲げられる特長を生かすことで、さまざまな場所での利用ができると期待されています。
厚みが1,000分の1ミリメートルしかないことも大きな特徴です。
加えて、シリコン型よりも低コストで生産できるという特徴もあります。
これらについては、次のメリットの部分で詳しく説明します。
また、光が弱くても発電できるという特徴もあります。
シリコン型は光が弱まると発電効率が大幅に落ちてしまうため、室内での発電は困難でした。
ペロブスカイト型は日陰や太陽光が届かない場所、屋内でも発電可能です。
ペロブスカイト型太陽光発電のメリット
曲げられる・薄くて軽い・安いという3つの特徴を持っているペロブスカイト型太陽電池には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
詳しく見てみましょう。
さまざまな形で製造・設置できる
柔らかくて曲がりやすいのは、ペロブスカイト型の大きなメリットです。
歪みに強いためフィルムのように曲げやすいことや、塗布・印刷でも製造できるという特性があることから、今まで設置できなかった場所にも太陽光パネルを設置できるようになります。
軽量で薄いことも大きな魅力です。
厚さは従来型のシリコン型太陽光電池の約100分の1以下、重さは約25分の1以下とかなりスリムです。
柔らかさ・軽さ・薄さの3つを兼ね備えたペロブスカイト型は、さまざまな用途で利用できると期待されています。
レアメタルを使用しない
製造する際にレアメタルを使用しないことも大きなメリットです。
レアメタルとは、色々な理由で使用・流通量が少ない金属のことです。
希少金属であるレアメタルは、流通量が少なく、産出国も限られています。
地政学的リスクにより輸入が滞るリスクに直面すると、生産が困難になる可能性があります。
実際、中国によるレアアース(レアメタルの一種)の輸出規制強化は、レアアースを使用している電気自動車の生産に大きな影響を与えました。
ペロブスカイト型太陽電池の素材は、比較的入手しやすい物質(ヨウ化鉛やメチルアンモニウム)などであるため、レアメタルのようなリスクを回避しやすいといえます。
製造コストが安くなる
製造コストが安い理由はいくつかあります。
- 塗布や印刷で大量生産できるから
- 薄いため材料費が安いから
- 高価な金属を使っていないから
- 輸送コストや設置コストを抑制できるから
コストがかかる現在のシリコン型に比べ、塗布や印刷で製造可能な薄型太陽光パネルは、製造コストを大幅に下げることができます。
大量生産が実現すれば、さらにコストが削減できると考えられています。
軽量で薄い薄型太陽光パネルは、シリコン型よりも材料が少なくて済むというメリットもあります。
そのため、製造に必要な材料も少なく、シリコン型の20分の1の材料で製造可能です。
材料を減らせる分だけ、コストをカットできます。
レアメタルを使用していないため、価格を安く抑えられるというメリットもあります。
しかも、主な原料であるヨウ素は日本が世界シェア30%を占める資源であるため、国内で自給できます。
さらに、軽量であるため輸送コストを軽減できる点や設置場所を選ばないため、設置コストが少なくて済むという費用面でのメリットもあります。
ペロブスカイト型の注意点
色々なメリットがあることで注目されているペロブスカイト型ですが、注意すべき点が3つあります。
変換効率がシリコン型よりも低い
現在主流のシリコン型太陽光パネルの変換効率は20%前後で、実験段階では25%を超えるものも存在します。
それに比べると、薄型太陽光パネルの発電効率は最大で20%前後であるため、シリコン型より発電効率が劣ります。
しかし、近年の研究により薄型太陽光パネルの発電効率はシリコン型に追い付きつつあり、25%以上の発電効率を達成したとする論文も提出されています。
今後は、発電効率の面でシリコン型に見劣りしなくなるかもしれません。
不安定で劣化しやすい
結晶構造が不安定であるため、酸素や水分、熱の影響を受けやすいというデメリットがあります。
そのため、高温多湿の環境では簡単に揮発したり劣化したりしてしまい、太陽電池の寿命が短くなってしまうのです。
今後は、主原料であるヨウ素の安定性を確保する技術や、ヨウ素以外の素材を使用するといった研究により、安定性を増す研究を進める必要があります。
鉛を含んでいる
鉛を使用しているのも不安材料です。
鉛が人の体に蓄積されると、以下のような鉛中毒の症状を発症します。
- 疲労感や睡眠不足、便秘などの症状
- 頭痛や精神異常などの症状
- 急性鉛中毒による脳への損傷
鉛を含んだ薄型太陽光パネルが不法投棄されると、周辺環境を汚染してしまいます。
放置された薄型太陽光パネルから流出した鉛は、水に溶け込み河川や海洋を汚染し、深刻な環境問題を引き起こす恐れがあるのです。
こうした悪影響を避けるため、鉛を使用しないペロブスカイト型太陽電池の開発も進められています。
大型化に難がある
ペロブスカイト型太陽電池には、小型であればシリコン型とに匹敵する高い発電効率を持っているものの、大型化すると効率が低下するという弱点があります。
モジュールが大きくなると、ペロブスカイト層を均一にすることが難しくなるからです。
現在、サイズを大きくするための研究が進められているため、近い将来、大型の薄型太陽光パネルが作成できるかもしれません。
まとめ
今回は薄型太陽光パネルとして期待されているペロブスカイト型の太陽電池を紹介しました。
従来型よりも用途が広く、省資源で軽量であることから、次世代の革新的な太陽光電池として研究が進められています。
しかし、安定性や大型化、鉛問題など解決すべき課題が数多く存在しています。
それらの課題をクリアしつつ、より便利な太陽電池にするための開発が進めば、太陽光パネルのコストを劇的に下げられるかもしれません。
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